SETOUCHI MINKA

【瀬戸内の名道】山口県のシーサイド・ドライブルート。

「百名山」「百名勝」「百名瀑」…日本全国に多彩なジャンルの百傑が存在する中、「日本百名道」「日本の道100選」といった道のベスト100も存在することをご存じだろうか。瀬戸内の各県にも「名道」の称号にふさわしい珠玉の道が数多く走っている。本州の西端に位置し、北に日本海、南は瀬戸内海に面する山口県にも一度は訪れてみたい美しい道が存在。今回は県土を縦断して瀬戸内海の反対側、日本海に面する絶景シーサイド・ルート2路線を走ってみた。

<取材・写真・文/鎌田 剛史>

この記事を書いたのは…
瀬戸内民家シリーズの雑誌表紙

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

①角島大橋(山口県道276号 角島神田線)

日本海に浮かぶ山口県下関市角島に架かる「角島大橋」は全長1,780mで、離島に架かる通行無料の橋としては日本屈指の長さを誇る。コバルトブルーの海と調和した美しさは、北長門海岸で随一の景勝地として人気が高い。さまざまな映画やドラマ、CMなどの舞台としても使われ、県外からも多くの観光客が訪れており、一度は訪れるべき絶景ドライブルートだ。

まずは橋の全景とコバルトブルーに輝く海のコントラストを堪能。

駐車場から見た角島大橋の全景。
ウッドデッキからも絶景ロケーションを楽しめる。
海土ヶ瀬公園にある角島大橋のモニュメント。
公園周辺には白い砂浜の美しいビーチが広がる。

角島大橋には中国自動車道の美祢ICから国道435号、国道191号、県道275号経由で北西に約47km走ると到着。本州側の橋の起点には、「海士ヶ瀬(あまがせ)公園」が整備されており、公園駐車場からは海上をまっすぐに延びる橋の全景と、コバルトブルーにきらめく海の美しいコントラストを眺められる。公園西側にある展望デッキからの景色も必見だ。角島大橋を渡る前には、ここからの絶景を存分に満喫しよう。

高台正面からの景色。撮影に訪れる人が多いので、
撮り終わったらすみやかに場所を譲ろう。
角島に近づくにつれて橋がゆるやかにカーブしているのが分かる。

公園から道路を挟んで正面にある高台もベスト・ビュー・スポットとして人気。角島大橋から角島まで一望できる撮影には最適な場所。ただし、この高台には駐車スペースがないので、車は公園の無料駐車場に停め、徒歩で訪れるようにしよう。

空と海と橋が織りなす絶景ビューを爽快に疾走。

角島大橋の本土側起点。
橋は橋脚の高さを抑え、周囲の景観に配慮したデザイン。

周辺一帯は北長門国定公園の絶景が広がる。
真っ青な日本海を見下ろしながら走り抜け、約5分で角島に。

いよいよ角島大橋を渡る。角島へ向かってまっすぐ伸び、まるで道に吸い込まれていくような感覚に。2003年には土木学会デザイン賞を受賞するほど、橋そのものの美しさにも定評がある。海と空と橋が一体となったこの道ならではの風景を心行くまで堪能したい。ただし、走行中はくれぐれも脇見運転に注意しよう。

日本海に浮かぶ島・角島に上陸。

瀬崎陽の公園 からの眺め。島内屈指のビューポイントとして人気。
公園内にはモニュメントも立てられている。

角島に渡って左側、橋のたもとにあるのが「瀬崎陽の公園(せさきあかりのこうえん)」。かつては島の岬にあった灯台のあかり(陽)が、付近を航行する船の安全を守ったという言い伝えからこの名前が付けられたそう。ここからも角島大橋と海士ケ瀬を一望でき、本土側からとはまた違った景色を楽しめる。

日本海に浮かぶ角島は人口約900人の小さな島。
130年前に完成して以来、今もずっと点灯し続けている総御影石造りの「角島灯台」。

島の最西端にある角島灯台は、明治9年(1876年)に完成した日本海側初の洋式灯台で、今も現役で船の安全を見守っている。灯台に上がることもでき、日本海の絶景を堪能できる。灯台周辺には「角島灯台公園」が整備されており、灯台記念館や遊歩道、東屋などがあるほか、ハマユウの自生地を散策できる。

角島灯台について詳しくはこちら

角島大橋の後は元乃隅神社(もとのすみじんじゃ)にも足を延ばそう。

角島大橋と併せて訪れたい名所が長門市の「元ノ隅神社」。角島大橋から国道191号を東に約30km行ったところにあり、海に向かって123基の鳥居がずらりと並ぶ光景は圧巻だ。澄み渡る空・海の青と、鳥居の赤が描く見事なコントラストはぜひ目に焼き付けておきたい。

昭和30年(1965年)に地元網元の岡村斉氏の枕元に現れた白狐のお告げから建立された「元ノ隅神社」。近年はパワースポットとしても人気を集めている。
断崖にある神社から海に向かい、鮮やかな朱色の鳥居が続く。鳥居のトンネルは最初はゆるやかな下り坂だが、途中から急な階段になる。
全長100m以上にわたって続く鳥居のトンネル。その圧巻の光景が訪れた人たちの心を惹きつける。鳥居は縁起のよい123(ひふみ)本。
元ノ隅神社近くの立石漁港にそびえ立つ巨岩「立石観音」も見所スポット。周辺の道はたいへん細いので通行には注意が必要。

目の前に広がるコバルトブルーにきらめく日本海の水平線と、ずらりと並ぶ真っ赤な鳥居のトンネルが生み出す神秘的な風景は、2015年にアメリカ合衆国のメディア・CNNが「日本で最も美しい場所31」の1ヶ所に選出された。商売繁盛・大量祈願・縁結び・子宝・開運厄除・福徳円満・交通安全・学業成就・願望成就などのご利益があるといわれ、大勢の参拝客が訪れている。鳥居のトンネルをくぐり終えた先にある断崖は、国指定天然記念物や名勝に認定された「竜宮の潮吹き」と呼ばれる場所。タイミングが合えば、岩壁に打ち寄せた波が「竜宮」と呼ばれる洞に入り込み、大きな音を立てながらダイナミックに潮が吹き上がる様子を間近に見ることができる。

元ノ隅神社 について詳しくはこちら

角島大橋(山口県道276号 角島神田線)

【アクセス】中国道美祢ICから国道435・191号、県道275号経由で約47km
【所在地】山口県下関市豊北町 24時間通行可能 通行無料

【問い合わせ】083-786-0234(豊北町観光協会) https://www.oidemase.or.jp

②北長門コバルトライン(一般国道191号)

山口県北部の日本海沿いに延びる国道191号は、美しいコバルトブルーの日本海の荒波がうち寄せ、雄壮な奇岩・断崖が連続する海岸線ルート。萩市から阿武町を経由し、島根県益田市にかけての路線は「北長門コバルトライン」と呼ばれ、数多くの断崖と岬をはじめ、白砂青松の砂浜、洞門や入江など、変化に富んだ美しい海岸線が続く。

リアス式海岸沿いに走るロング&ワインディングロード

日本海に浮かぶ島々や変化に富んだ海岸線など、美しい風景が広がる。
交通量も多くないので渋滞を気にすることなく快適に走れる。手つかずの自然を眺めながら爽快なドライブを満喫できる。
道中には「道の駅 阿武町」のほか、車を停めて景色を楽しんだり休憩できる駐車スポットが所々に整備されている。
路線は北長門海岸国定公園内を走っている。その途中には鳴き砂で知られる「清ヶ浜海水浴場」など見所も多い。

車窓に広がるのは、奇岩・巨岩が生み出すダイナミックな光景。

日本海のリアス式海岸が車窓に広がる気持ちの良いドライブが楽しめる。
路線沿いには、日本海の荒波に侵食された断崖絶壁、洞門、石柱などが多く、豪壮雄大な景勝を生み出している。

風と波の浸食作用が作り上げた自然の洞穴など、多数の絶景スポットが点在。遊歩道が設置されている場所もあり、車を停めて雄大な自然を間近で体感することもできる。奇岩断崖が続くその独特の景観美は人気を集めており、天気の良い日や休日には、ドライブを楽しむ多くの車やバイクでにぎわっている。

JR山陰本線「惣郷川橋梁」も立ち寄りたい名物スポット。

JR山陰本線の須佐駅~宇田郷駅間の白須川河口に架かる「惣郷川橋梁」。ゆるやかなカーブを描く美しいデザインも魅力。
日没時間と列車の時刻表を事前に確認し、撮影スポットを確保したら、あとはひたすら列車が来るのを待とう。シャッターチャンスを逃さないで。

北長門コバルトラインから県道343号線に入り、車をしばらく走らせると、日本海の波打ち際に架かるレトロな高架橋が見えてくる。JR 山陰本線にかかる全長189 mの鉄道橋「惣郷川橋梁」は昭和7 年に完成した橋で、水平線に沈む夕日を借景に走る列車の姿が美しく映える。フォトジェニックな写真の撮影ポイントとして鉄道ファンからは高い人気を誇っている。

惣郷川橋梁 について詳しくはこちら

萩市の世界遺産群を訪れて、歴史に思いを馳せてみる。

萩藩が西洋式の鉄製大砲を鋳造するため、安政3年(1856年)に試作的に築いた「萩反射炉」の遺跡。
明治維新の先覚者・吉田松陰が主宰した私塾「松下村塾」。
萩藩が、安政3年(1856年)に設けたとされる造船所の遺跡「恵美須ヶ鼻造船所跡」。

ドライブの工程に、2015年に世界遺産登録された「反射炉」や「松下村塾」をはじめとする萩市の遺産群巡りを加えるのも一興。日本のものづくりの基礎となる歴史的スポットを訪れ、先人たちに思いを馳せてみるのもおすすめだ。

萩市の世界遺産群について詳しくはこちら

北長門コバルトライン(一般国道191号)

【アクセス】小郡萩道路絵堂ICから国道490号、県道32号、国道262号経由で約25km
【所在地】山口県萩市~島根県益田市 24時間通行可能 通行無料

【問い合わせ】08388-2-3114(阿武町経済課) http://www.town.abu.lg.jp

山口県のおすすめ山岳ドライブルートはこちら

瀬戸内の自然・文化・歴史・家づくりなど、地元情報が満載!
瀬戸内の新しいカルチャー&ハウジングマガジン!!
「SETOUCHI MINKA LIVING with NATURE 瀬戸内の自然と暮らす。」をチェック!

「SETOUCHI MINKA」の取材風景や本誌未掲載写真、メーキング動画などをInstagramで公開中!
トップページに戻る