瀬戸内地域で造られる日本酒は「全国新酒鑑評会」などで金賞を獲得する銘柄も多く、そのレベルの高さには定評がある。瀬戸内の豊かな自然に育まれた海の幸・山の幸にも合う繊細な味わいが特徴で、理想の食中酒と評される銘柄も少なくない。そんな瀬戸内地域の中でも、酒どころとしても知られる山口県で醸し出される銘酒の数々と、各地の杜氏たちが培ってきた技と心意気を頑なに守りながら、独自の創意工夫と素材へのこだわり、現代技術との融合など、美味い酒造りへの探求に情熱を注ぐ老舗の酒蔵を紹介。
<取材・文/鎌田 剛史>
目次
安らぎと自然への回帰、文化の高揚へと誘う山口の酒。
山口県は瀬戸内海、関門海峡、日本海と接し、中央部にある日本最大級のカルスト台地「秋吉台」など、豊かな自然と気候風土の恩恵を受けた酒の名産地。フランスを中心に海外でも人気の「獺祭」をはじめ、「雁木」「東洋美人」など、全国の愛飲家に愛されるハイブランドな銘酒が数多く生み出されている。山口の酒は下関のフグやウニ、萩のカニや貝類といった海鮮と合う淡麗辛口が多い。2000年には桜から酒造に適した酵母を分離した「やまぐち・桜酵母」の開発に成功し、「桜が生み出す日本酒」として話題になった。
山口県の老舗酒蔵・銘酒 9選。
<1927年創業> 新谷酒造 株式会社
わかむすめ
夫婦ふたりで営む小さな酒蔵。佐波川水系の水を仕込み水に使用し、初代より受け継がれる濃醇旨口の酒を、一滴入魂の想いで造り続けている。
山口市徳地堀1673-1
0835-52-0016(直営所)
https://wakamusume.com
<1877年創業> 八百新酒造 株式会社
雁木(がんぎ)
純米酒製造一筋の蔵元。余計なものを足したり引いたりせず、シンプルに真正面から酒造りに向き合っている。
岩国市今津町3-18-9
0827-21-3185
http://www.yaoshin.co.jp
酒蔵見学要相談
<1951年創業> 村重酒造 株式会社
村重(むらしげ)
創業以来、一貫して品質本位を基本理念に据え、手づくりの良さを生かした酒造りに専念。長年にわたって品質向上に努めている。
岩国市御庄5-101-1
0827-46-1111
https://www.murashige-
sake.co.jp
酒蔵見学可能(要予約)
<1948年創業> 旭酒造 株式会社
獺祭(だっさい)
酒のある楽しい生活を提案する酒蔵であり続けることが信念。 日常を彩り喜ばれる酒造りに努め、世界中に名高い銘酒「獺祭」を醸している。
岩国市周東町獺越2167-4
0827-86-0120
https://www.asahishuzo.ne.jp
酒蔵見学可能(要予約)
<1819年創業> 株式会社 はつもみぢ
原田(はらだ)
周南市の街中にある小さな酒蔵。四季醸造蔵で一年中酒を仕込んでいる。超少量仕込みで、1本1本手作りで丁寧に酒造りをしている。
周南市飯島町1-40
0834-21-0075
http://www.hatsumomidi.co.jp
酒蔵見学可能(要予約)
<1875年創業> 株式会社 山縣本店
防長鶴(ぼうちょうつる)
杜氏の目標は「うまみのある美しい酒を造ること」。伝統を大切にしつつ、芋焼酎や梅酒、リキュールなどの新しい試みにも挑戦している。
周南市久米2933
0834-25-0048
http://www.yamagt.jp
酒蔵見学可能(要予約)
<1902年創業> 中村酒造 株式会社
宝船(たからぶね)
維新のふるさと・萩にある小さな蔵元。杜氏を中心に蔵人が一丸となり、真心を込めて旨い酒造りに励んでいる。
萩市椿東3108-4
0838-22-0137
http://shirouo.jp
酒蔵見学可能(要予約)
<1921年創業> 株式会社 澄川酒造場
東洋美人(とうようびじん)
萩の米・水・人・時間が「シンフォニー」を奏でる酒「東洋美人」には、「稲をくぐり抜けた水でありたい」という蔵人の思いが込められている。
萩市中小川611
0838-74-0001
https://toyobijin.jp
<1764年創業> 有限会社 堀江酒場
金雀(きんすずめ)
山口県では最も古い酒蔵。「酒はもっと美味しくなる」という言葉を胸に、守り続けた酒造りの技と信じた地元の素材で、神髄の一滴を今も追い続けている。
【製造場】岩国市錦町広瀬6781
0827-72-2515
【販売場】岩国市錦町広瀬6746-1
0827-72-2527
https://www.horiesakaba.com
「堀江酒場」の酒蔵リポートはこちら
<Tips>地酒の酒かすでブランド養殖魚を開発。「やまぐちほろ酔いシリーズ」。
山口県では、地酒の酒かすをエサに加えて養殖した魚を「やまぐちほろ酔いシリーズ」としてブランド化する取り組みを進めている。2019年にサバでの実験をスタート。その結果、酒かすを混ぜたエサを与えるとサバのうまみ成分が増し、身が甘く香る効果が確認されたという。新たな県産品として期待が高まるとともに、酒かすの有効活用もできるとして注目を集めている。今後はサバのほか、ウマヅラハギやアユ、トラフグなどの試験にも力を入れていく予定。
酒の肴にもバッチリな山口県の郷土料理「てっさ」についての記事はこちら
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