瀬戸内の美味しい銘酒を注ぎ、美味しい郷土料理を味わうひと時を心行くまで楽しみたいならば、それらを盛り付ける「器」にもこだわってみてはいかがだろう。せっかくなら瀬戸内の伝統的工芸品を選ぶのもまた一興。ここでは酒器としても最適な兵庫・岡山・広島・山口・香川・愛媛各県の伝統工芸品を紹介。酒や肴の味わいがより一層引き立ち、至福のひと時に彩を添えてくれるはずだ。
<取材・文/鎌田 剛史>
目次
兵庫県
丹波立杭焼(たんば たちくいやき)
瀬戸、常滑、信楽、備前、越前と並び日本六古窯の一つに数えられ、その起源は平安時代末期。日本では珍しい「登窯」と呼ばれる窯で焼かれ、素朴さを感じさせる日用雑器を中心に、高い人気を誇る。
出石焼(いずしやき)
出石焼の創始は垂仁天皇の時代といわれ、磁器として焼かれたのは江戸時代に入ってから。絹の肌のような「白磁」出石焼は、清楚な風情を持ち、優雅で気品にあふれ、彫刻が素地の白を引き立たせている。
赤穂雲火焼(あこう うんかやき)
江戸時代後期に創出された焼物で、黒色を加味した赤く燃え上がるような文様が特徴。長らく陶土・焼成方法不明の幻の焼物とされていたが、1982年の復元成功以来、赤穂地域の郷土品として親しまれている。
王地山焼(おうじやまやき)
江戸時代末期に篠山藩主が京焼の陶工を招き、王地山で藩窯を始めたのが発祥。藩の廃止とともに廃窯となりその伝統は途絶えていたが、1988年に丹波篠山市が王地山陶器所を再興、当時の技法を再現している。
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岡山県
備前焼(びぜんやき)
日本六古窯のひとつ。50~100年寝かせた良質の土で一点ずつ成形し、乾燥後に長時間じっくりと焼く。釉薬を一切使わないため土の風合いがそのまま残り、自然の温かさを感じる素朴な焼物に仕上がる。
虫明焼(むしあけやき)
京都の清水焼の流れをくむ焼き物。薄肌できめの細かい肌ざわりと柔らかい曲線、緑かかった薄茶色などが、気品のある優しい風合いを作り出している。
郷原漆器(ごうばらしっき)
蒜山地方のクリ材を使い、木目を大切にしながら備中漆などの天然の漆で仕上げた漆器。原木を生木のままロクロで挽いて木地を作るのは、他の漆器では見られない独特の技法。
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広島県
宮島焼(みやじまやき)
江戸時代から焼かれ始めたといわれ、厳島神社本殿下の砂を入れたことから 「お砂焼」の名でも知られる。何度か窯の興廃を経て、明治時代中期に現在の宮島焼の基礎が固められた。清楚な雰囲気に特色がある。
戸河内挽物(とごうちひきもの)
明治時代中期、島根県出身の石田富次が木地作り・漆塗りの技術を伝えたのが起源。ろくろで木材を回し、刃物で削り出した木工品で漆を塗ることも。刃物の切れ味により表面は滑らかで光沢を放つ。
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山口県
萩焼(はぎやき)
16世紀末、毛利輝元の命により朝鮮人陶工が萩で御用窯を築いたのが始まり。古くから「一楽二萩三唐津」と評されるほど全国にその名を馳せる逸品。使うほどに渋みが増す枯れた素地の色が独特。
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香川県
香川漆器(かがわしっき)
高松藩の保護により発展し、江戸後期に香川漆器の始祖といわれる玉楮象谷(たまかじぞうこく)が、独自の技を加えて新しい手法を創案。その技法は現在まで脈々と受け継がれている。
神懸焼(かんかけやき)
小豆島の観光地「寒霞渓」の土産品として創案された。粘りの少ない小豆島の粘土を紐状に長く伸ばし、くるくる巻きながら形を整える「ひも作り」の技法で、ぐい飲み、茶器など幅広く作られている。
岡本焼(おかもとやき)
三豊市豊中町岡本地区で、古くより農家の副業として作られてきた焼物。「ほうろく」といわれる土釜や鍋などの生活雑器が中心で、赤肌の焼き上がりは、温かみあふれる素朴な味わい。
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愛媛県
砥部焼(とべやき)
つるっとした肉厚の白磁に、藍色で多彩な柄が絵付けされた陶磁器。白と藍色のコントラストが美しく、配色がシンプルで、和洋中どんな料理の器としても合う。厚手のため硬くて丈夫なのも魅力。
桜井漆器(さくらいしっき)
良質な檜で木地を作り、漆を何度も丁寧に重ね塗りした後、蒔絵と沈金を施して作る堅牢さと美しさを兼ね備えた漆器。椀、皿、小鉢などの日用品から高級品まで幅広く愛用されている。
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