うまい食事には、うまい酒が欲しくなる。多様な食文化を形成している瀬戸内を、ほろ酔い気分で満喫するこのコーナー。そのままでも十分に美味な郷土料理だが、酒の肴としても楽しめるとっておきの瀬戸内郷土料理10選を紹介する。
今回は、岡山県の郷土料理をフューチャー。ぜひ、うまい酒を片手に読んでみてほしい。
ばらずし
祝いや祭りの席には欠かせない、色鮮やかなソウルフード。
酢漬けにしたサワラや、ままかり、黄ニラ、エビ、アナゴ、シイタケ、錦糸卵に高野豆腐など、様々な具材を酢飯の上に盛り付けたものが「ばらずし」だ。名称は「備前ばらずし」、「隠しずし」、「祭りずし」など、バリエーションがある(ちなみに筆者宅では「ばら」と呼ぶ)。
ばらずしの起源は江戸時代に遡る。江戸初期の名三君としても知られる藩主、池田光正公の倹約令が契機となって生み出された郷土料理だ。この倹約令の中に、食事は「一汁一菜」に規定するものもあった。そこで、お櫃の底に色とりどりの具材を敷き詰めてその上に酢飯を盛り、ゴマやノリを散らすことで質素なすしを演出。お櫃をひっくり返すと、カラフルで豪勢なばらずしが完成するという仕組み。「何としても豪勢なすしを食べたい」という、岡山県民の食への飽くなき執着心や反骨精神が反映された、非常におもしろい郷土料理。
豊富な具材と酢飯を味わうには、それらを引き立ててくれる辛口の日本酒で味わいたい。
ままかり
飯だけでなく、酒も借りちゃう…!?
岡山県をはじめ、西日本ではなじみ深い「ままかり」だが、実は「サッパ」という名前の魚。「サッパ」は漁村での小舟を指す言葉であったり、ササの葉に似ている魚という意味であったりと、語源は諸説ある。
漢字で「飯借」と書き、「飯(まんま、まま)」を「借りる」魚という意味になる。これは、ままかりが「自宅の飯だけでなく、隣家から飯を借りて食べてしまうほど止まらない」というエピソードに由来する。
一般的にままかりは、薄切りにしたタマネギやニンジン、トウガラシなどと一緒に酢漬けにして食べる。小骨が多い魚であるままかりであるが、じっくりと酢に漬けておくことで小骨ごと食べられるようになる。しっかりとした身の食感と、サクリ、という小骨のアクセントが楽しい。ご飯のお供として食べると、本当にあっという間に茶碗が空になるので驚きだ。
シャンパンや白ワイン、辛口の日本酒と合わせると酢の酸味と相まって、さっぱり爽やかな味わいが楽しめる。健康的な晩酌を実現する、ヘルシーな郷土料理と言えるだろう。
淡麗から濃醇まで味は多彩。「岡山県の酒蔵・銘酒名鑑」はこちら
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