SETOUCHI MINKA

香川県の伝統的工芸品図鑑。

木、草、土、石といった自然素材を高度な技術で加工した伝統工芸品は、はるか昔より日本人の生活や文化を支え続けてきた。人間の磨き抜かれた手から生み出される品々の繊細さと美しさは、日本が世界に誇れるもののひとつ。瀬戸内にも多彩な伝統工芸品が今も残り、愛され続けている。古来より人々の暮らしに寄り添ってきた香川の伝統工芸品を一堂に紹介。味わい深い匠の逸品を、住まいの一部にアクセントとして取り入れてみてはいかがだろう。

<取材・文/鎌田 剛史>

この記事を書いたのは…
瀬戸内民家シリーズの雑誌表紙

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目次

繊細な手仕事が生む匠の逸品

香川漆器(かがわしっき)

高松藩の保護により発展し、江戸後期に香川漆器の始祖といわれる玉楮象谷(たまかじぞうこく)が、独自の技を加えて新しい手法を創案。その技法は現在まで受け継がれ、経済産業大臣指定の伝統的工芸品。

丸亀うちわ(まるがめうちわ)

写真/鎌田 剛史

江戸時代、こんぴら参りの土産品として、「金」の文字入りのうちわが全国に広まったのが始まり。後に丸亀の地場産業として発展、各地のうちわと融合して現在の丸亀うちわが出来上がった。現在では日本の9割が生産されている。経済産業大臣指定の伝統的工芸品。

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讃岐桶樽(さぬきおけだる)

「桶」は、細長い板を円筒形に並べてたがで締め、底板を入れた構造であり、特殊用途のふた付きの桶を「樽」と呼んで区別する。香川の桶樽は、現在も寿司桶・御櫃・杓などが、生活の器として受け継がれている。

欄間彫刻(らんまちょうこく)

写真/鎌田 剛史

香川の欄間彫刻は、初代高松藩主の松平頼重を慕って来た飛騨の木工職人によって伝わったと言われている。白木の美しい木目を利用して、繊細な細工を施された製品には、時代の風格が漂っている。

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組手障子(くでしょうじ)

写真/鎌田 剛史

「組手細工」とは、数ミリほどの木片を釘を使わず手作業で組み上げる技法で、障子の格子の模様によく使われる。障子から差し込むやわらかな光は、日々の生活にやすらぎを与えてくれる。

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志度桐下駄(しどきりげた)

瀬戸内海に面した香川県さぬき市志度は、全国に誇る桐下駄の産地。明治40 年から続いている桐下駄の製造は、約40もの工程を経て作られ、木肌のぬくもりを感じさせてくれる。

肥松木工品(ひまつもっこうひん)

「肥松」とは樹齢数百年の老松の幹の部分。香川では江戸時代から良質な肥松を用いた木工品が作られてきた。自然の木目や、年月の経過により出てくる赤茶色の艶が、独特の調和を織りなしている。

讃岐一刀彫(さぬきいっとうぼり)

1837年の金刀比羅宮の旭社建立時に、全国から集まった宮大工によって始まったと伝えられ、こんぴら参りの土産品として広まった。ノミの刃痕をそのまま仕上げに生かした巧みな彫りが魅力。

桐箱(きりばこ)

軽くて柔らかい桐を使って組み立てた桐箱。湿気を防ぐという特性や、光沢がある木目の美しさから、神社仏閣をはじめ、庶民の生活の場でもさまざまなものの収納具として昔から使われている。

菓子木型(かしきがた)

動植物を象った和菓子をつくる際に用いられるのが菓子木型。砂糖や餡などの材料を流し込む木型づくりには熟練した職人技が要求され、現在では木型そのものが工芸品としても珍重されている。

讃岐提灯(さぬきちょうちん)

讃岐提灯は、四国八十八カ所の奉納提灯として生まれ、香川県独特の「一本がけ」といわれる技法で作られている。寺社特有の図柄や紋様が入った伝統的な提灯だけでなく、インテリア用としても親しまれている。

高松和傘(たかまつわがさ)

高松和傘は、かつて高松で生産されていた手すき和紙と、山間部で豊富にとれる竹材を使って作り始められた。伝統的図柄に加え、現代的デザインも多彩であり、手作りならではの存在感を楽しめる。

一閑張・一貫張(いっかんばり)

木や竹で作った下地に和紙を張り重ね、柿渋を塗って仕上げたのが一閑張(一貫張)。防水効果のある柿渋は耐久性を高め、独特の風合いを醸し出す。かごや皿から小物家具まで多彩な製品がある。

香川竹細工(かがわたけざいく)

細く裂いた竹を形を整えながら製品に合わせて編み上げた竹細工製品。実用性と美を兼ね備えた生活用具として普及し、用途に応じたものが各種考案され、現在まで受け継がれている。

竹一刀彫(たけいっとうぼり)

写真/鎌田 剛史

竹製の柱掛けや一輪挿しなどに、彫刻刀で絵柄や文字を手彫りしたもの。香川漆器の始祖・玉楮象谷が編み出した「讃岐彫」が起源といわれ、竹の持つ優しさと強さを生かし、美しく仕上げている。

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古式畳(こしきだたみ)

写真/鎌田 剛史

平安時代から公家や武家、寺社などの格式ある空間づくりに用いられていた古式畳。四角、六角、丸型など形やサイズはさまざまであり、雅やかな柄生地を使って縁取りされているのが大きな特徴。

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神懸焼(かんかけやき)

小豆島の観光地・寒霞渓の土産品として創案された。粘りの少ない小豆島の粘土を紐状に長く伸ばし、くるくる巻きながら形を整える「ひも作り」の技法で、ぐい飲み、茶器など幅広く作られている。

岡本焼(おかもとやき)

三豊市豊中町岡本地区で、古くより農家の副業として作られてきた岡本焼。「ほうろく」といわれる土釜や鍋などの生活雑器が中心で、赤肌の暖かな焼き上がりは明るい感覚にあふれている。

理平焼(りへいやき)

初代高松藩主・松平頼重が呼び寄せた都の陶工が、栗林公園の北門近くに窯を築き、藩の焼物として代々受け継がれてきた。季節感にあふれた郷土色豊かな絵付けの茶道具や花器が作られ、珍重されている。

讃岐装飾瓦(さぬきそうしょくがわら)

写真/鎌田 剛史

香川では、奈良時代から盛んに瓦が製造されており、各時代の窯跡も発掘されている。建築様式の変化による瓦の多様化により、魔よけとしての鬼瓦のほか、装飾瓦やいぶし瓦なども製造され、デザインも多彩。

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豊島石灯篭(てしまいしどうろう)

瀬戸内海に浮かぶ豊島で採れる石は、軟らかく加工しやすいことから、灯籠用原石として鎌倉時代から採掘され始め、全国の寺院などに用いられた。ノミやゲンノウで細工され、さまざまな形の石灯籠に仕上げられる。

庵治産地石製品(あじさんちいしせいひん)

写真/鎌田 剛史

五剣山のふもとの高松市牟礼町・庵治町は、「庵治石」と呼ばれる良質の花崗岩が採れ、全国的にも有名な石材の産地である。石灯籠や彫刻物などさまざまな製品に加工され、高い評価を得ている。

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鷲ノ山石工品(わしのやませっこうひん)

高松市国分寺町の鷲ノ山には良質な石が豊富で、ふもとでは古くから石材加工業が発達。鷲ノ山の石は軟らかく加工しやすいのが特徴。現在でも灯籠や彫刻物などの石製品が熟練の手によって生み出されている。

打出し銅器(うちだしどうき)

銅板に熱を加え、木槌や金槌で叩いて形を整える技法が「打出し」。この技法で作られた釜、やかんなどは地金がしまり、丈夫で長持ちする。独特の落ち着いた色合いは、使うほどに味わいが増す。

左官鏝(さかんごて)

高い品質と使いやすさに定評がある香川の左官鏝。昔は天然の木材で作られていたが、現在は島根県産の安来鋼(やすきはがね)を使用し、焼き入れを繰り返しながら一つひとつ丁寧に作られている。

讃岐鍛冶製品(さぬきかじせいひん)

香川での鍛冶業の歴史は古く、高松市鍛冶屋町や観音寺市茂木町では鍛冶職人が集まって業を営んでいた。包丁、なたなどの刃物類や、すきやくわなどの農具を、槌のひと打ちから生み出していく。

讃岐鋳造品(さぬきちゅうぞうひん)

鋳造品の製造方法は、手作りの原型に溶かした金属を流し込み、成形して着色する。幅広く製品が作られており、仏像や梵鐘、器に加え、県内各地の秋祭りの獅子舞で使われる鉦(かね)も、伝統的な鋳造製品。

保多織(ほたおり)

江戸時代に高松藩の織物としてはじまり、明治までは技法が秘密にされていた。碁盤の目のように織るので独特の風合いがあり、丈夫で長持ちし「多年を保つ」ことからこの名がついたといわれている。

讃岐のり染(さぬきのりぞめ)

「のり染」は、もち米で作られた防染のための糊を、筒描きや型紙で図柄に沿って置き、藍がめにつけたり、刷毛で引染めして仕上げる。その技法により、のれん、旗、獅子舞のゆたん、雑貨などが作られている。

讃岐獅子頭(さぬきししがしら)

香川は獅子舞が盛んな地域であり、その獅子頭は一部を除き張子の手法で作られている。粘土の型に和紙を張り合わせ型抜きをした後、胡粉や漆で素地を作り装飾を施す。軽量で丈夫な乾漆造りが特徴。

手描き鯉のぼり(てがきこいのぼり)

香川県坂出市では、和紙に手描きで色付けした鯉のぼりがかつて盛んに作られていた。現在は需要が減っているが、風情ある手描きの技は今も受け継がれており、卓上に飾れる小ぶりな鯉のぼりも作られている。

金糸銀糸装飾刺繍(きんしぎんしそうしょくししゅう)

香川県中・西讃の祭りに登場する太鼓台「ちょうさ」の飾りには、さまざまな図柄の豪華な刺繍が施されている。昔からの刺繍技術を守りながら、職人により丹精込めて縫い上げている。

節句人形(せっくにんぎょう)

ひな節句、端午の節句、香川県中・西讃地方で行う旧暦8月1日の八朔の馬節句など、節句人形はこれらに欠かせないものとして、江戸時代から作られている。職人の手により約200 の行程を経て仕上げられる。

高松張子(たかまつはりこ)

粘土や木の型に和紙を貼り重ねて作られたものを張子と呼び、高松市内で江戸時代から製造されている。とりわけ「おマキさん」の伝説にちなんだ「奉公さん」は、ほのぼのとした表情で、多くの人に愛されている。

高松嫁入人形(たかまつよめいりにんぎょう)

高松市ではかつて婚礼の際、さまざまな型に原土を詰めて型取りし彩色した人形を、花嫁が近隣に配っていた。現在はその風習は見られなくなったが、高松の伝統的な郷土玩具として受け継がれている。

張子虎(はりことら)

子どもの健やかな成長を願い、端午の節句や八朔祭の飾り物として古くから愛用されてきた張子虎。現在は三豊市で作られており、手作業で丁寧に作られた張子虎は、一つひとつの表情が異なるのも魅力。

讃岐かがり手まり(さぬきかがりてまり)

香川の手まりは、讃岐三白のひとつである綿の糸を草木染めし、ひと針ひと針かがりながら、美しい幾何学模様を描いていく。大小さまざまなサイズや天然香料が入ったものなどバリエーションも多彩。

【写真提供/香川県】


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