日本の伝統的な文化として、世界でも人気の盆栽。しかし、意外と盆栽の歴史は知られていないのが現状。ここでは盆栽の歴史や、現在の形になるまでを簡単にご紹介。
盆栽の歴史や発祥について。
実はかなり興味深い園芸文化、盆栽。盆栽は日本独自の伝統文化として知られているが、ルーツは中国にあったり、はじめから「盆栽」という名前ではなかったりと、かなりおもしろい成り立ちを持っている。ここで紹介するのはごくごく一部。奥深い盆栽世界の入り口としてみてほしい。
盆栽の発祥は?
発祥は、今から1,000年以上前の中国。当時の王子のための墓の内部に描かれた壁画。気が植わっている鉢を抱えた人が描かれており、これが古代中国における最古の盆栽の絵と言われている。
日本には平安時代から鎌倉時代にかけて、禅仏教とともに渡来してきたと考えられている。そのため、「有限の空間で無限を表現する」という禅思想が強く反映され、今日まで日本独自の進化を遂げている。
盆栽の変遷とは?
「盆栽」という呼び名は江戸時代後期から明治時代にかけて定着されたと言われており、これに至るまで何度か名前や形態が変化しているのが、おもしろいポイント。
国内で最古と言われてる盆栽の絵は、鎌倉時代に描かれた「春日権現験記(かすがごんげんげんき)」で描かれているもの。数点の盆栽が、盆栽棚に並べられている様子がわかる。盆栽の育てる環境を棚という形で行っている点は現代と同じだ。
江戸時代ごろには、当時発行されていた『日葡辞書』には、盆栽の前身である「盆山(BONSAN)」という記載が確認されている。盆山は、将軍や僧侶などの特権階級間で流行した園芸文化で、石を中心に山水景を表現していた。
能の演目として有名な「鉢木(はちのき)」。これもまた、盆栽の前身といえる。時代が下るとともに、愛好家の層が特権階級から庶民階級まで広がっている。もとより、鉢に草花を植えて楽しむ文化を持っていた日本で、盆栽が全国に広まるのはそう時間がかかるものではなかったようだ。
戦後には、高度経済背長期とともに日本万博を機に国内外で「盆栽ブーム」が起こる。全国で盆栽愛好家たちが急増し、盆栽の展示会や品評会も盛んに行われていた。和装の男性が真剣なまなざしで手入れをする…そんなイメージが根付いたのもこの時期。
盆栽の今後は?
風にそよがれる、筆者溺愛の苔玉盆栽たち。
「盆栽は男性の趣味」という固定観念や、住環境の変化から育成が難しいとされていたために人気に陰りを見せていた盆栽。しかし、盆栽を若年層や世界に発信しようという企業や愛好家、プロジェクトが立ち上がるなど、現在盆栽界に新しい風が吹いている。
また、小さなサイズの「小品盆栽」や、手のひらに乗るほどのサイズの「ミニ盆栽」、ころんとしたフォルムにふかふかとした苔がかわいらしい「苔玉盆栽」など、盆栽の形態にも小型を主軸とした変化が見られる。
現在も歴史の通過点に過ぎず、大きな転換期の只中と言える盆栽界。今後盆栽という芸術・文化がどのように変化していくのか、目が離せない。
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