近年国内外から高い注目と人気を集めている瀬戸内の島旅。瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島は、それぞれに輝きのある特色を持っているが、共通しているのは、豊かな自然、のどかな町並み、レトロな建造物などが織り成す美しい景色にたくさん出会えること。どの島も実に多彩な「景趣」の宝庫であり、そんな叙情的な風景を求めて遠路はるばる訪れる人も多い。今回は「庭」をキーワードに、素晴らしい景趣を誇る島をピックアップ。その他の見所も合わせて、庭の景趣を楽しむ瀬戸内の島旅を提案したい。
<取材・文/鎌田 剛史 写真/鈴木 トヲル モデル/竹内 悠貴 竹内 梨声>
国生み神話が残る孤島の古刹で出会った、独創的な石組みの美しい名庭園
兵庫県南あわじ市 沼島
瀬戸内海の島で最大の面積を誇る兵庫県の淡路島。その南約4.6kmの沖合に浮かぶ小さな島が沼島だ。この島には、太古の昔にイザナギ・イザナミの二神がつくった日本最初の島であるという「国生み神話」が根付いている。島内には人間の手が入っていない雄大な自然がそのまま残り、「上立神岩」や「おのころ神社」など、 先人たちから脈々と受け継がれる信仰を今に伝えるスピリチュアル・スポットが点在。また、江戸時代に築かれた県内屈指の名庭園や、梶原景時の墓といった歴史的価値の高い場所も現存している。
* GARDEN SPOT 神宮寺庭園 *
「神宮寺」は平安時代の880年に開基された寺院で、鎌倉幕府の初代将軍・源頼朝の重臣として知られる梶原景時をはじめとする梶原氏の菩提寺でもある。本堂裏にあるのが、隣接する「沼島八幡神社」から連なる裏山の斜面を利用して構成された築山式枯山水庭園。作者や造られた時期は不明だが、寺院が現在地に整備された江戸時代初期に作庭されたものと考えられており、沼島で産出された結晶片岩を「人」 字形に組み合わせて多用する技法が用いられている。周囲は静寂に包まれた環境ながらも、板石を自在に組んだ鋭く躍動的な美しさが感じられ、作者の高度な感性や技術力もうかがえる。非常に価値の高い庭園として、兵庫県指定重要文化財になっている。
住所/兵庫県南あわじ市沼島2523
☎️ 0799-52-2336
常時解放 入園無料
https://www.city.minamiawaji.hyogo.jp/bunkaisan/bunkazai/r-35.html
海も山も庭園も。霊験あらたかなセイクリッド・プレイスをハシゴする。
01 おのころ神社(自凝神社)
神体山の山頂に位置するおのろこ神社は、国産み神話に登場するイザナギ、イザナミの二神をまつっている。おのころ山そのものが御神体とされ、地元からは「おのころさん」と呼ばれている。
02 水軍
漁師でもある店主が新鮮な海の幸で多彩なメニューを提供。アオリイカやアジにマダイなど、獲れたての新鮮な魚介を味わえる。ハモ料理はぜひ食べたい逸品。沼島ターミナルセンターから徒歩5分。
住所/兵庫県南あわじ市沼島2402
☎️0799-57-0338
https://www.nushima-suigun.com
03 梶原五輪塔
神体山の山頂に位置するおのろこ神社は、国産み神話に登場するイザナギ神宮寺の墓地内にある梶原景時の墓。鎌倉時代前期に建立され、2基のうち向かって右側の1基が景時の墓であると言われている。、イザナミの二神をまつっている。おのころ山そのものが御神体とされ、地元からは「おのころさん」と呼ばれている。
04 沼島遊歩道
各地の名所を巡りながら島内を歩ける遊歩道が整備されている。島を1周したり縦断したりできるが、距離は長く、起伏が激しい箇所もあるので注意。
05 上立神岩
高さ約30mの巨大な奇岩。天の沼ほこや御柱、竜宮の表門であるとも伝えられ、イザナギの命にも例えられている。その迫力ある姿は一見の価値あり。
06 吉甚 バッタリ・カフェ
沼島唯一のカフェで、古民家を活用した総合観光案内所でもある。伝説にちなんだ国海ソーダフロートが人気。笑顔が愛らしい店主・川勝恵さんとのおしゃべりも楽しい。
住所/兵庫県南あわじ市沼島2400
☎️0799-53-6665
07 弁財天神社
フェリー乗り場からすぐの小高い場所に佇むこぢんまりとした神社。海上安全や戦の神、守護神として島の人たちからの信仰を集めている。
08 港町散策
フェリー乗り場からすぐの小高い場所に佇むこぢんまりとした神社。海上安全や戦の神、守護神として島の人たちからの島内観光を満喫した後、フェリーの出航時間まで余裕があるなら、のんびりとした雰囲気が漂う港町の散策がオススメ。道具持参で釣りに興じるのも◎
兵庫県南あわじ市 沼島
Nushima Island 面積:2.73㎢
兵庫県最南端、淡路島の南約4kmに浮かぶ漁業の島。西側の入江に港と集落がある。断崖絶壁が続く東側は磯釣りの人気スポットでもあり、多くの釣り愛好家が訪れている。
島内は徒歩で移動。各地を訪れる遊歩道は整備が行き届いていない所もあるので注意。トイレや自動販売機も少ないのでしっかりと事前準備を。帰りのフェリーに遅れないよう行動しよう。
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