瀬戸内各県には、先人たちが生み出し発展させてきた技法を一途に守りつつ、
現代のセンスを織り込んだ全く新しい作庭を追求し、日々研さんを重ね続ける匠たちがいる。
毎日の暮らしに季節の彩りと癒やしを与える庭づくりに定評のある瀬戸内の庭師6 人を訪ね、
日本が誇る庭の伝統技術の保存と継承への覚悟、現代の暮らしへと融合させる工夫、
そして、一貫して情熱を注ぎ続ける庭づくりへの思いを聞いた、インタビューシリーズ。
TEXT_ 鎌田 剛史
地球上の万物全てが発想の源に。
だから庭づくりは面白い。
家族の絆や思い出を紡ぐ、
世代を超える庭づくりにまい進したい。
河手 原さんと私とはお互いに感性が似ている気がするんです。庭づくりに対する考え方とか、庭に自分らしさを出さないようにするところとかね(笑)
原 偉大な先輩にそう言っていただけて光栄です。河手さんは本当に優しいんですよ。一応僕も同業者であり、競合他社じゃないですか。にもかかわらず、技術とか植物の知識とか、なんでも惜しみなく教えてくれますし。
河手 私は代々続く庭師の家に生まれ、条件や基盤がある程度整った状態からこの道に入ったわけです。ですが、原さんは縁もコネもない、全く何もないゼロからスタートしてるでしょ。それは本当にすごいことだと心から尊敬しているんですよ。そのパワーや熱意だとか、若さならではのアイデアなど、刺激を受けている部分がいっぱいある。何より、二人で庭について意見を交わすのが楽しいんですよね。「この人は本当に庭師に向いている人だなぁ」と何度も思いましたからね。
原 河手さんの先輩としての助言のおかげで自分の感性を磨くこともでき、近頃庭というものがようやく分かってきた気がします。
河手 庭とずっと向き合っていると、どうしても行き詰まってしまいますよね。どうやっても美しくまとまらない、何をやってもうまくいかないっていうときもあるんです。一人で煮詰まっているときとかに、原さんとの会話から、ふっとヒントをもらうこともありますよ。
原 庭はあくまでお客さまありきで、その要望に対して私たちプロのエッセンスを違和感なく注ぎ、お客さまの理想の姿に着地させることが大事。その気持ちは河手さんと同じですね。庭師としての立ち居振る舞いや心意気など、共感できることも多いです。
河手 最近、原さんと二人で思いを同じにしているのが、これからの庭のあるべき姿。「世代を超える庭を造っていきたい」ってよく話してます。親から子へ受け継がれる庭こそ、理想とする姿だよね、と。
原 僕の母の実家にも庭があったんですが、そこで幼少期に見つめていた草抜きをする母の背中を今でもよく覚えています。当時は草抜きなんて嫌だし、面倒臭いと思ってましたが、年を重ねると草抜きもいい運動になってなんだか新鮮だし、庭いじりがなんとなく楽しくなってくるもの。そんな風に親子が思い出でつながり、家族の絆が深まるきっかけとなるような庭を提供していきたいですよね。
河手 そうですね。あとは、時代に合った合理的な庭づくりを追求していくことかな。原さんも私も理想とする庭を造り続けていけるよう、お互いに切磋琢磨していきましょう。
Professional Gardener Tools
腰道具
植木バサミと窓のこ
河手 伸紀:かわて のぶき
1973年生まれ。
「金光園」4代目。
趣味の自転車でストレスを発散。
「庭連」所属。
原 滋甫:はら しげとし
1985年生まれ。
音楽創作が得意。
最近は書道とてん刻に熱中。
「JCD日本商環境デザイン協会」所属。
本誌未掲載写真などはInstagramでも更新中!