瀬戸内各県には、先人たちが生み出し発展させてきた技法を一途に守りつつ、
現代のセンスを織り込んだ全く新しい作庭を追求し、日々研さんを重ね続ける匠たちがいる。
毎日の暮らしに季節の彩りと癒やしを与える庭づくりに定評のある瀬戸内の庭師6 人を訪ね、
日本が誇る庭の伝統技術の保存と継承への覚悟、現代の暮らしへと融合させる工夫、
そして、一貫して情熱を注ぎ続ける庭づくりへの思いを聞いた、インタビューシリーズ。
TEXT_ 鎌田 剛史
創造力と探究心を絶やさず、
自然を体感できる庭づくりを。
自然と向き合い触れ合った幼少期の記憶が、庭づくりの原点。
18歳から庭師の道を歩み始め、もう60年近くにもなります。私は幼いころから木や山、小川などの自然が好きで、自然と向き合うことが性分に合ってたんでしょうね。山に入ってはよくキャンプをしていたものです。私が造る庭の原点はそのころに見ていた山の原風景。全て自然がお手本なんです。これまでに「あなぶき・きなりの家」の庭を数多く手掛けさせてもらいました。また、「こどもの森」「チボリ公園」など岡山県内の大型事業にも携わることができ、作庭への意識が変わったのは自分にとっては大きかったですね。大小に関わらず、全ての現場で常に心がけてきたのは、植物、石、土などの素材は、敷地や土壌、周辺の環境といった「場」に合ったものを選ぶこと。この「場を読む」ことが庭師には欠かせない技術で、これは今も意識し続けていますね。
作庭の中では石積みなど石に関することが好きですね。いつも石の表情を見て、時には石と会話しながら施工してます(笑)お客さまから感謝の言葉をいただいた時はやっぱりうれしいし、やりがいを感じます。また、毎年イベントで庭の手入れの仕方や寄せ植えの体験会を行っているのですが、自分にとっては仕事以外でお客さまと触れ合える良い機会になっています。お客さまに庭への興味を持ってもらえるのはうれしいことですし、喜ばれる姿を目にすれば、また仕事にも励みが出ます。
現代の庭は雑木を用いた自然なものが主流。大きな敷地に小川が流れ、雑木に自然の鳥がさえずり、その中でお茶をする…。そんな自然を体感できる、公園のような庭を提案したい。そして、クリエイティブな思考を常に持ち、高みを目指していきたいです。
Professional Gardener Tools
大バサミ
バックホウ
石割りの道具
武田 正二郎:たけだ しょうじろう
1947年生まれ。A型。
スプーンなどの木工や登山が趣味。
座右の銘は「一期一会」。
本誌未掲載写真などはInstagramでも更新中!
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