瀬戸内各県には、先人たちが生み出し発展させてきた技法を一途に守りつつ、
現代のセンスを織り込んだ全く新しい作庭を追求し、日々研さんを重ね続ける匠たちがいる。
毎日の暮らしに季節の彩りと癒やしを与える庭づくりに定評のある瀬戸内の庭師6 人を訪ね、
日本が誇る庭の伝統技術の保存と継承への覚悟、現代の暮らしへと融合させる工夫、
そして、一貫して情熱を注ぎ続ける庭づくりへの思いを聞いた、インタビューシリーズ。
TEXT_ 鎌田 剛史
ありのままに軽やかに、
生物としての庭と向き合う。
肩肘張らずにさりげなく、庭を造りたい。
私は、庭師という仕事はとても良い職種だと思っています。庭づくりの場所は一つとして同じ場所はありません。限られた場所に空間をつくり、身近な木を適した場所に植えていく。穴を掘り、石を据え付け、また穴を掘り木を植える…。単純な作業の中には何重にも重なった工程があり、それらが重なって庭が出来上がるのです。庭に木がある暮らしは大変かもしれません。日々の草抜きや芝刈り、秋の落ち葉かきなど、いくらでも手間や時間をかけることができます。そんな庭は日ごとに変化する子どものようでもあり、住む人を悩ませます。そして、庭は無口で待ってくれません。庭は自然の中にあるからです。緑のある暮らしの中には、ハッと気付かされることがたくさんあります。いつも抜いている草に可愛らしい花が咲いたとか、芝刈り後の達成感とか、紅葉や春の芽吹き、落ち葉を踏んだ音、爽やかな木陰、庭にやって来る蝶々やトンボなどの季節の昆虫たち…。いずれも些細な事象にすぎませんが、庭は実にさまざまな風景を見せてくれます。庭に木を植えると、たちまちに雰囲気が変わります。木々越しに見え隠れする住宅は奥行きがあり、壁には草木の影が映ります。芝生の庭はリビングとつながり、生活空間を広げ、強い日差しも和らげてくれます。庭で遊ぶ子どもたちの風景は、いつの時代も大切でつなげていかなければならない財産だと思っています。私たち庭師は、庭空間を使って日々の暮らしをより良い物に変えていける職種だと信じ、日々穴を堀り、石を据え付け、また穴を堀り、木を植え、新しい芽が出ることに希望を持って、日々庭を造っています。
Professional Gardener Tools
植木バサミ
剪定バサミ
根切り
森口 和也:もりぐち かずや
1979年生まれ。
15歳から植木・作庭の道を歩み続ける。
常に自然体がモットー。
「庭連」所属。
本誌未掲載写真などはInstagramでも更新中!
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