瀬戸内各県には、先人たちが生み出し発展させてきた技法を一途に守りつつ、
現代のセンスを織り込んだ全く新しい作庭を追求し、日々研さんを重ね続ける匠たちがいる。
毎日の暮らしに季節の彩りと癒やしを与える庭づくりに定評のある瀬戸内の庭師6 人を訪ね、
日本が誇る庭の伝統技術の保存と継承への覚悟、現代の暮らしへと融合させる工夫、
そして、一貫して情熱を注ぎ続ける庭づくりへの思いを聞いた、インタビューシリーズ。
TEXT_ 鎌田 剛史
庭師として切に願うのは、
庭を通じた心豊かな社会の実現。
今までに無い、誰も見たことがない「令和の庭」を追求したい。
木や水から得られる安らぎは、人間の心の源に欠かせないもの。私たち庭師は今の時代に合ったスタイルで、心が豊かになる庭を提供することが大切だと思っています。身近に少なくなってきた自然の尊さや素晴らしさを、庭から感じてもらいたいんですよね。たくさんの情報が飛び交い、目まぐるしく動いている現代には、やはり心癒やされる場所が必要だと思うんです。家に庭があることによって、家族に大切な安らぎの時間がきっと生まれますし、庭にある木の実を摘んだり、やってくる鳥や昆虫たちと遊んで季節を感じたりすることは、お子さんの情操教育にも良いと感じています。
令和の時代にふさわしい庭。それは現代人の目線に合わせた、自然が分かりやすく心に染み渡っていくような空間でしょうか。人間も自然の一部だと思い起こしてもらえるような…そんなイメージ。難しいですね。先輩たちが築き上げてきた庭づくりの伝統を守ることも大切ですが、私はそればかりに固執するのではなく、現代に合った形にどんどん変化していく柔軟性も必要なのではないかと思っているんです。
私が日ごろからモットーとしているのは「人格以上の庭はつくれない」。まずは自分の庭づくりに取り組む姿勢を高めなければ、お客さまに喜ばれる庭を提供できないと考えています。そのためにも、水の流れや植栽・石の配置など、これまでに誰も見たことがない、全く新しい庭の姿を生み出せるように、ずっと試行錯誤を続けていきたいと思っています。何より一人でも多くの方に「庭っていいな」と思ってもらうこと。単純なことですが、私にとってはそれが一番の願いであり、庭師としての最高の喜びなんですよね。
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坂本 拓也:さかもと たくや
1973年生まれ。この道30年。
2009年の全国都市緑化岡山フェアにて国土交通大臣賞を受賞するなど輝かしい実績を持つ。
「庭連」所属。
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