SETOUCHI MINKA

瀬戸内の伝統工芸士を訪ねて。~香川県・丸亀うちわ~

木、草、土、石といった自然素材を高度な技術で加工した伝統工芸品は、はるか昔より日本人の生活や文化を支え続けてきた。人間の磨き抜かれた手から生み出される品々の繊細さと美しさは、日本が世界に誇れるもののひとつ。香川県にもさまざまな伝統工芸が今も残っており、先人たちが生み出し発展させてきた技法を一途に守りながら、研さんを重ね続ける匠たちがいる。古来より受け継がれてきた技や文化を、後世に残し伝えるという役割と責任を担いながら日々精進し続けている瀬戸内の伝統工芸士の仕事ぶりを拝見。伝統技術の保存と継承や、現代の暮らしへと融合させる工夫、そして、一貫して情熱を注ぎ続けるもの作りへの思いを伺った。

<取材・写真・文/鎌田 剛史>

丸亀うちわ(経済産業大臣指定伝統的工芸品)/大林 正春さん

優雅にあおげば心まで涼しくなる竹の芸術品。

「丸亀うちわ」は1633年に住職の宥睨(ゆうげん)が金毘羅参りの土産品として考案したのが始まりといわれている。その後、丸亀藩が藩士の内職にうちわ作りを奨励、「伊予竹に土佐紙貼りてあわ(阿波)ぐれば讃岐うちわで至極(四国)涼しい」とも歌われたように、材料の産地が近く調達しやすい土地柄だったこともあり、丸亀はうちわの一大産地として発展。現在も日本のうちわ生産量の約9割を誇る。柄と骨が1本の竹から作られているのが丸亀うちわの大きな特徴。形や図柄、大きさなどもさまざまで、バラエティに富んでいる。

1本のうちわが出来上がるまでには47もの工程があり、一つひとつの作業に高度な技が必要だ。

丸亀城内にある「うちわ工房『竹』」で実演販売。

丸亀市と関係団体は丸亀うちわの伝統を後世に残そうと取り組んでおり、もっとも重要な後継者の確保は、一般から希望者を募り職人として育成する事業を約20年前から実施している。2週間の技法講座を受講後、同市港町にある「うちわの港ミュージアム」で1年間の研修を終えれば職人としてデビューできるプログラムだ。

丸亀城内に店を構える「うちわ工房『竹』」の職人たちも同講座の出身者ばかり。国の伝統工芸士である大林正春さんもそのひとりだ。一般企業を定年退職後、何か新しいことをしたいと講座に参加したのがきっかけだとか。「伝統の技を絶やさないように私も力になりたいと思って。力の続く限り、ユーザーのニーズに合ったうちわを作り続けていきたいですね」と意欲を見せていた。

「うちわ工房『竹』」には男女7人の職人が在籍。

丸亀うちわの材料となる竹は国産のみを使用。年に数度、スタッフが県内の竹林へ足を運んで伐採することもあるという。

在籍するうちわ職人のうち、大林さんと三谷さん、川田さんは伝統工芸士の資格を持つ。各職人が自分のセンスでさまざまな和紙を買い付け、現代エッセンスも織り込んだ製品を手作りしている。

うちわ工房「竹」

香川県丸亀市一番丁丸亀城内
☎0877-25-3882
10:00~16:30 
水曜日定休(祝日の場合は翌日) 
https://marugameuchiwa.jp/facility

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