横の石段を上がればすぐ土手の上。深い草むらに縁取られた土手道と河川敷がどこまでも続き、遠い山々まではるばると見渡せる。「この風景と共に暮らせる家をつくれたら」と、Oさまは何年も待ってこの川べりの住宅地の一画を得たという。
敷地は東南の2面が開けた角地。北側は目の前に土手ののり面が迫るが、2階の高さからは川向こうまで気持ちよく視界が広がる。そこでプランは言うまでもなく、メインルームを2階に置き、風景に向かって窓を開いていくことが主軸となった。また、豊かな借景を得られる川側に対し、住宅が立ち並んでやや無機質な印象のある反対面は、敷地内に自ら景観をつくることを意識した。接道する2面を壁で囲んでプライベートな中庭を設けるとともに、壁の外にもたくさんの草木を植え込み、道行く人たちと共に緑を楽しめるオープンな外構を造った。
大谷石を敷いた広いピロティを通って玄関に入り、中庭を横目に見ながらそのまま階段へ。踊り場の真上に設けた天窓が、漆喰の白壁に陰影をつけながら、柔らかな光を落とす。階段を上がるにつれてガラス壁越しに徐々に2階の室内が見えてきて、中に入れば真っ先に、ダイニングの腰高窓から広々とした川の景色を眺められるという仕掛けだ。
ダイニングとリビングをあえてずらして配置した空間は、立つ場所、座る場所によって見える景色がさまざまに変化するのが楽しい。ソファに深く身体を委ねれば、南北両側の窓から見えるのは空と緑だけ。窓先に映るアオダモのこずえも、土手に茂る草花も四季折々に表情を変え、暮らしに彩りを添えてくれる。
建築実例データ | |
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取締役 押田 怜司