広島県は全国でも有数のカキ養殖が盛んな地域。そこで廃棄物として大量に発生するカキ殻を有効活用し、健康・快適・耐久性に優れた漆喰を生み出した広島県呉市の建材メーカーを訪ねた。
昔から神社仏閣や城郭の壁などに使われてきた「漆喰」。日本では時代とともに湿式工法から乾式工法が一般化したことなどから、今では使われることが減ってしまったが、広島県呉市の建材メーカー「瀬戸漆喰本舗」が開発した「瀬戸漆喰」は、健康で快適な空間を生み出し、環境にも優しい次世代の建築資材として今再び注目を集めている。「『瀬戸漆喰』は、健康で快適な住空間づくりはもちろん、環境循環型社会の構築が叫ばれる現代にぴったりの建材です」と、同社代表・佐藤文弘さんは自信を見せる。
先代の父・陽一さんが、家の中の化学物質でめまいや吐き気などを起こす「シックハウス症候群」に苦しむ長女を救いたいと思ったのが開発のきっかけ。要因となる化学物質が含まれていないさまざまな自然素材を模索した結果、最も適した建築資材としてたどり着いたのが漆喰だった。
陽一さんは、県から紹介された近畿大学工学部教授の森村毅さんに相談しながら、新たな漆喰の開発に着手。開発を進めていく上で、割れたりヒビが入ったりしやすいという課題を克服することに試行錯誤を繰り返したが、地元で盛んなカキ養殖で発生するカキ殻を酢酸で溶かしたカルシウムイオン水を漆喰に混ぜると強度が5倍以上に高まることを突き止め、2010年に「瀬戸漆喰」として製品化に成功した。
販売を開始して以来、健康に優しい建材として注目を集め、新築戸建やマンションリフォームなどへの需要が増加。従来の漆喰よりも格段に施工しやすいことも評判で、職人のほか日曜大工が趣味の一般客からの問い合わせも増えているという。
2020年に代表に就任した文弘さんは、エンドユーザーに品質だけでなく価格にも満足してもらうことを第一に考え、工務店や一般ユーザーへの直売に切り替え、製品価格の値下げに踏み切った。さらに、国内だけでなく、中国や台湾、ウガンダなど世界各国への輸出にも積極的に取り組んでいる。「たくさんの人に『瀬戸漆喰』の魅力を知ってもらいたい。そして、世界中の家を心地良い居住空間にして、世界の家づくりの常識を覆したいです」と、文弘さんは壮大な夢を膨らませている。
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