庭づくりの相談から完成までの流れを知り、
「和の庭」「雑木の庭」「ナチュラルガーデン」「リゾートガーデン」「エクステリア」のジャンルごとの
庭づくりにおけるポイントをおさえよう。
<illustration_大林 秀典>
目次
相談からプラン作成までの間の、現地調査や打ち合わせといった細かな流れは、
企業により多少異なる。依頼する企業のフローを確認しておこう。
01. 理想の庭をイメージする
どんな空間にしたいかイメージしよう。ポイントは、その空間に「何を求めるか」の優先事項をはっきりさせること。それにより、外庭・中庭といった形態や和風・洋風といったテイストなど具体的な形が見えてくる。
02. 無理のない予算を決める
広さや用いる素材の種類など、さまざまな要素で価格は変わってくる。そのため、予算を先に決めておくことが非常に大切。そうすることで、庭づくりを無理なく進めていくことができる。
03. 企業を探す・選ぶ
どんな企業があって、どんな施工をしてくれるのか、施工例や会社情報を見て知っていこう。気になる企業と出会ったら、電話やメールで問い合わせを。家づくりと同時に検討する場合は、依頼する住宅会社に伝えよう。
04. 相談・設計・見積もり
企業に要望を伝えると、敷地図や住宅の建築図面、現地調査などをもとに、設計と見積もりを作成してくれる。初回は無料であることが多い。内容や金額をしっかり検討し、気になるところは変更してもらおう。
05. 最終確認・契約
設計と予算に納得がいけば、契約に進む。工事の日程など着工に向けた決定や、支払いに関する確認を行う。
06. 施工
契約を完了したら、工事開始。工事中も気になる点があれば、変更に対応してもらえるかためらわず相談しよう。実際に作庭が進む中で、植物や石のより良い配置などがあれば、逆に企業から、要望点は保持しつつ、さらに良い形に変更してくれることもある。
07. 完成・引き渡し
完了後、施主確認を経て引き渡し。植栽や設備などの説明をしっかり聞いておこう。引き渡し後も、植栽の剪定や設備の困りごとなど、アフターメンテナンスの相談に対応してくれる。
おすすめは、家づくりと同時に行うこと。
リフォームの場合を除き、庭づくりのタイミングは主に2 パターン。「家の新築と同時に」または「家の新築後に別途」。
どちらの場合も、上記の流れでイメージを形にできる。
家のプランニングの段階で、住宅会社に庭も含めて相談すると、造園会社と連携して進めてくれるので、
家と庭のテイストをより統一でき、予算もトータルで考えやすい。
庭からの発想で家のプランを考えることもできる。
落ち着きある風情と、どこか漂う懐かしさに心和む。
日本人になじみ深い景観がもつ、時を経ても飽きのこない魅力。
季節感を味わえ、小スペースでも実現可能。
根強い人気を誇る代表的なジャンルの一つ。杉や桧など、日本人になじみ深い樹種が主役。家への出入り時に履物の脱ぎ履きができるよう置かれた沓脱石や、通路を形作るために敷かれた踏み石などが特徴。それらがもつ伝統的な呼び名や作法にも、古来から受け継がれてきた美学を感じることができる。
常緑低木を用いてデザインの全体を形作り、四季を感じられるよう落葉樹を取り入れるのが主流。和の庭といえば広い空間を思い浮かべるが、2 ~ 3 坪程度の「坪庭」でも表現可能であり、小スペースであっても実現できる。
木の特性を考えて配置しよう。
手入れ・管理の面からは、日差しを考慮して高・低木、下草を配置することと、下草まわりの風通しをよくすることが、全体的な留意点。長期的なメンテナンスをどう行っていくかもイメージしながら、プロに相談するとよいだろう。
松や桜は一般的に剪定などの管理が難しく、杉苔は乾燥を嫌うため夏の水やりが欠かせないなど、種類ごとの特性も知っておきたい。また、四季を感じられるよう取り入れる落葉樹は、落葉の時期にはたくさんの落ち葉の掃除が必要となる。隣家や公道に落ちないよう、植え付け位置も考慮したい。
現代の住宅にもマッチする、管理しやすい和庭。
伝統的な灯籠や蹲居に合わせる植栽は、松やマキが一般的だが、自然樹形が美しいモミジなどを用いると、剪定の手間が少なく比較的管理しやすい庭になる。
□ 玄関アプローチ
(御影石)
□ 灯籠
□ 蹲居
□ 照明
□ 砂利
□ 植栽
□ 苔
懐かしさを感じる山の木々を取り入れた、
ふるさとの風景のような癒やしの庭。
自然を身近に感じながら暮らせる。
コナラやクヌギなど「里山」を構成する樹種を「雑木」という。そんな「里山の木」を用いるのが雑木の庭。成長期が春から夏であり、その時期に葉が茂るため、天然の日よけや目隠しにもなる。落葉樹を取り入れると冬には葉が落ちて光を届けてくれるので季節に応じて日差しの入りをコントロールできる。
里山をイメージしたものではあるが、広い空間は必ずしも必要ではなく、工夫次第。木には、下枝が少なく頭上に枝が広がるものや、地面近くから複数の枝が伸びる「株立ち」というものなどがあり、スペースに応じて選ぶと良い。
高木を中心に、長期的な視野での管理が大切。
上に挙げたコナラなどの主に用いられる木は「高木」と呼ばれ、高く大きく生長する種類。2階の屋根まで届くほど大きくなる木なので、のちのちの日当たりや風通しまで考慮して植えよう。高く伸びると手が届かなくなり、枝も固くなって剪定が難しくなるので、適切な頻度で手入れを行う必要がある。
木をあまり建物の近くに植えると、根が横に伸びて基礎を持ち上げてしまうこともある。建物から2 ~ 3m は離して植えると良いだろう。
木々を眺めて歩く園路のある、趣あふれる庭。
アオダモやモミジといった雑木を植え、石・岩などの自然素材を豊富に用いて、趣のある空間に。
観賞用の庭石「景石」を配し、庭園美を演出。
□ 園路
□ 景石
□ 水鉢
□ 照明
□植栽:アオダモ
モミジ
タマスダレ
フッキソウ
ヤマユリ など
造り込みすぎず自然のままを生かし、
自由な発想で楽しむ庭。
小スペースでもセンス良い空間をつくれる。
あまり人の手を入れず、樹種選びも自由。植物が自然に育っている景観を楽しむ庭。日本でイングリッシュガーデンと呼ばれる、イギリスの伝統的な庭が発祥。ナチュラルガーデンでは、植物の自然な配置がポイントのため、面積の小さな庭でも可能なのがメリット。また、庭が小さくても空間に立体感や奥行きを出せる「ボーダーガーデン」という手法もある。ボーダーガーデンとは、壁や塀に沿って延びる細長い帯状の花壇のこと。奥に丈の高い植物を植え、手前ほど低いものを植えることで立体感と空間の広がりを演出し、庭を広く見せることができる。
あまり手入れのいらない植物を選ぼう。
自然のままに育てるのがポイントといっても、何一つ手を掛けることなく放置していると、もちろんのことだが庭は荒れてしまう。剪定や雑草抜き、枯れた花の除去などを適度に行おう。
落ち葉のない常緑樹や、手間を掛けなくても時期になると毎年開花する多年草、虫よけ効果があるハーブなどを上手く取り入れると、維持・管理がしやすい。
また、土の地面には雑草が生えやすいので、芝や草丈の低いグランドカバーを植えたり、砂利や石などで土の部分を減らしたりするのも工夫のひとつだ。
季節ごとに咲く花を楽しむ庭。
枕木とアンティークレンガで、心地よいぬくもりを演出。
種類豊富な植栽は、季節ごとに主役が代わり、一年を通して目を楽しませてくれる。
□ 枕木
□ アンティークレンガ
□ 植栽: 宿根サルビア
ロニセラ
セージ
アンソニーパーカー
アスチルベ
ローズマリー など
家にいながらリゾート気分。
家族や友人と、ゆったりとした時を楽しめる空間。
「そこで時間を過ごす」ことができる庭。
名前のとおり、リゾート地のイメージで造る庭。ヤシやシマトネリコなどの南国植物と、ベンチやテーブル、ラタン家具などのファニチャーを組み合わせる。家具を置くことからわかるとおり、庭で時間を過ごすことを目的として造られる。夜の照明で演出するのも、ぐっとリゾート感が増すポイント。
チェアーでくつろぐのはもちろん、ウッドデッキを設けて「おうちグランピング」を楽しむなど、活用の仕方は自由自在。
その土地に合った南国植物を選ぼう。
南国風の雰囲気を演出できる植物にはさまざまな種類があるが、温暖な気候の地に生育する植物を用いることが多い。そのため、基本的に日当たりや水はけのよさが必要になる。環境が合わないと枯れてしまうこともあるので、自分の土地に合った樹種選びが大切。世話の簡単なものが多いが、水をやりすぎる
と水枯れしてしまうこともあるので、注意しよう。
ファニチャーなどのアイテムも、雨風や日光にさらされるので、防水性・耐久性が必要。そのため初期費用は高めになりがち。メンテナンスの手間や費用も含めて、しっかり検討しよう。
広々ウッドデッキのあるリゾートガーデン。
多様な樹種を取り入れ、リゾート感あふれる景観に。
リビングとつながる広いウッドデッキを造ることで、庭でのBBQ など楽しみも広がる。
□ ウッドデッキ
□ 植栽:ドラセナ
チャメロプス
ユッカロストラータ
古木オリーブ
アガベ
ユッカ・デスメティアーナ
ココスヤシ
住まいの魅力を引き立てる「家の顔」。
好みのライフスタイルを実現できる。
敷地の周りを囲ってしまわないオープンスタイルと、塀やウッドフェンスなどで囲うクローズドスタイルがある。オープンスタイルは、明るさと開放感、そして外観や植栽を目立たせられるのがポイント。クローズドスタイルは、外からの視線を気にせず暮らせ、庭で過ごす上でも気兼ねなく伸び伸びできる。どちらのタイプも門周りは「家の顔」になる部分。デザインや、ポスト・インターホンなどの機能をどこに配置するかをしっかり計画することで、家と外構が調和した住まいになる。
周辺環境との調和や、防犯面も考慮しよう。
外構・門周りは、外部と接する部分になるため、自分たちの好みや希望はもちろん、周辺環境との調和を考えることも大切。エリアによっては自治体により「景観デザイン指針」や「景観デザインコード」が設けられていることもあるので、チェックしよう。防犯面では、インターホンやポストのある箇所までは
人が入れてしまうので、設置位置の吟味や、インターホンや表札・ポストなどが一体となった「機能門柱」の採用など、オープンタイプ・クローズドタイプともに、十分に検討しよう。
外構周りをリフォームし、利便性を向上。
既存の庭木を伐採し、地面の高さを道路と合わせて、土間コンクリートを施工。
駐車スペースと敷地の段差には手すりを設置し、暮らしの利便性を高めた。
□ ブロック塀と庭の解体
□ ブロック塀のカット部の補修
□ 樹木伐採・伐根
□ 手すり
□ 立水栓
□ 土間コンクリート
暮らしに欠かせない実用的空間。
デザイン的な工夫が可能で、意匠性にこだわれる。
駐車スペースの舗装材には、コンクリートやアスファルト、洗い出しや樹脂塗装、インターロッキング、天然石など、さまざまなものがある。それぞれにコストやメンテナンス性、タイヤ痕のつきにくさや人の歩きやすさなどの特性があるほか、質感にもそれぞれ個性があり、デザイン性にこだわることが可能。施工上生じる目地や割り溝を利用したり、複数の舗装材を組み合わせたりとアイデアをふくらませることで、オリジナル性の高い表現が可能。
駐車以外の要素も考慮しよう。
まず何より駐車に必要な広さを確保することが必要。国土交通省「駐車場設計・施工指針」が参考になる。車1 台分の駐車ますの大きさは、普通車で幅2.5m ×長さ6.0m 以上、軽自動車で幅2.0m ×長さ3.6m 以上とされている。敷地形状と想定している駐車の仕方とを照らし合わせながら計画しよう。広さの他にも、玄関等の出入口からの位置や動線、採光への影響や圧迫感の有無、雨の日の使い勝手など、毎日の暮らしの快適さ全般を考慮してみよう。
グランドカバー植物で彩った、緑あふれる駐車場。
土間コンクリートの目地に、グランドカバーに適した植物を植えれば、ナチュラルな雰囲気の空間に。植物は踏み圧に耐性のあるものを選ぶのがポイント。
□インターロッキングブロック
□ 土間コンクリート
□ 照明
□ 天然石
□ 砂利
□ 芝生:ティフトン芝
□ 植栽:アオダモ
ヒメイワダレソウ
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