県土面積が狭く、森林の少ない香川県でも、木のぬくもりを感じる自然と暮らす家を建てたいという人は多い。実際にそのような住宅は香川県内に数多く建てられているが、そこで使用されている木材のほとんどは外材だ。そんな県外材依存率の高い香川県において、県産材の利用促進と活性化を核とするプロジェクトが立ち上がった。
47都道府県で、香川県が一番小さい県であることは周知の事実。森林面積も大阪府、東京都に次いで3番目に少ない(※)。その森林もマツや広葉樹などの二次林、竹林などが大半を占め、スギやヒノキといった人工林の割合は少ないのが現状だ。
そんな”山無し県”である香川においても、正真正銘の「Made in 香川の家づくり」は十分できると確信し、県産材の地産地消プロジェクトを立ち上げた人がいる。高松市にある工務店「樹工舎」の社長・矢野智大さんだ。「すでに地元ヒノキを使った家づくりへの県の補助制度があり、地産地消を推進する動きも確かにあるのですが…。実際のところ1棟当たりに使われている県産材はごくわずかで、大半は外材や県外材。果たしてそれで県産材の家とうたっていいのかと。オール県産材の家はできないものかと考えていたんです」。(※平成29年林野庁統計情報より)
新型コロナウイルスの影響によるウッドショックで国内の木材が不足、国産材の価格が急騰する状況に陥り、この香川県の木でさえどんどん県外に出荷されていく状況を目の当たりにした矢野さんは「今しかない」と動く。高松市塩江町の山の所有者や山師に掛け合い、スギやヒノキを直接買い付ける約束を取り付けた。
県産材で業界を盛り上げたいという矢野さんの思いに、製材業者や家具屋、庭師、設計事務所のほか、「讃岐正藍染」の職人、草木染アーティストも賛同。「森と人とかたりべ」と銘打ったプロジェクトをスタートした。「名前は仲間たちとワイワイ話し合って決めました。僕らで新たなムーブメントを起こすことで、香川の森林を活性化し、次世代に語り継いでいきたいという願いを込めて。語り部を平仮名にしたのがミソ」と笑う矢野さんだが、「県産材の家づくりの普及は、とりあえずまだ先。まずは小物や家具など気軽に手に取りやすいものからその魅力を知ってもらい、最終的に家づくりにつながれば」とあくまで控えめ。年内のHP開設を皮切りに、SNSも駆使しながら積極的にアピール活動を展開する。「今はワクワクが止まりません!」と矢野さんは少年のように声を弾ませ、期待に胸を膨らませていた。
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