南に子世帯、北に親世帯を並べた平屋の二世帯住宅。設計は、長く住宅建築の仕事に携わるKさまご夫婦自らで手掛けており、家族のプライベートな自邸であることはもちろんながら、つくり手として自分たちの家づくりのスタイルを知ってもらう場所という側面ももって造られている。
目の前に大きな池、裏手の2面に田畑の風景を見渡せる、のんびりとした郊外のロケーション。家は周囲の風景に溶け込むように低く伏し、ヤマボウシやアオダモなどさまざまな植栽が表を彩る。建物を引き立て、景観をつくる役割をもつこの前庭に対し、もう一つ暮らしの中の大切な「よりどころ」となっているのが、住まいの真ん中に設けられた中庭だ。ロの字の回廊に囲まれた中庭は、完全に家族のためだけにある屋外空間。朝昼は日の光が木々の緑を輝かせ、夜は室内からこぼれる明かりが壁面に樹影を映し出す。ご夫婦は「日頃から、家の中で自然を感じられるような設計を提案していますが、住んでみて改めてその価値を感じましたね」と語る。
天井に張ったラワン材の深い色みが空間に上質な趣をもたらし、北欧アンティークの家具と調和する。キッチンを段下がりにして、ワークトップとフラットに続くカウンターを設けたのは、忙しい日常の中でも家族のコミュニケーションを大切にしたいから。互いに家事や宿題をしながらも、顔を上げればすぐ目線が合い、なにげない会話が生まれる。窓の配置や動線、用いる素材など、あらゆる要素が確かな考えの基に選ばれており、まさにKさまご夫婦の住まいと暮らしへの思いを表す一邸となっている。
建築実例データ | |
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私たちは家族の心地よい距離感、庭とのつながり、快適な居心地や使いやすさなど、全ての工程にこだわりを持ち、丁寧につくります。子どもたちと一緒に過ごせる時間は案外短いもの。家族みんなが家で過ごす時間を好きでいられるように、家族みんなが心豊かに暮らせるように、そんな家づくりのお手伝いができたらうれしいです。
代表取締役 川西 真樹