T字路の突き当たりに立つ、平屋の家。通りに面して大きく軒下のガレージが開けるが、奥にはモルタルの壁と板塀が立ち、一見しただけではどこから入っていいのか分からない。しかし内には確かに暮らしの気配が感じられ、導かれるように塀の隙間から中へ入っていくと、そこはロの字に囲まれた小さな中庭。近所の顔なじみがふらりと庭先へ入ってくれば、家人が窓から顔を出して世間話が始まる、そんなどこか懐かしい路地裏のような空間が、塀の内に展開している。 庭に面した玄関ドアはガラス張りで、訪れる人をオープンに迎える。玄関の土間はわずかな上がり框を経て長く奥まで続き、内外の境があいまいなままダイニングキッチンへと行き着く。土間から一段上がって畳敷きのリビングがあり、壁一面には巨大な本棚。これは奥さまが最もかなえたかったもので、長年好きで集めてきたたくさんの絵本とボードゲームがずらりと並べられている。土間から畳、畳から子ども部屋への段差は腰掛けるのにちょうど良く、座る姿勢に飽きればそのまま畳にゴロリ。思い思いに絵本を読んだり、集まってゲームを楽しんだりと、家族みんなで和やかな時間を過ごせる空間がつくられた。 実は施主のNさまは、「セントテ」で長く現場監督を務めるスタッフ。満を持して建てる自邸は、住み手としての希望はもちろん、作り手としてトライしたいことも随所に盛り込まれているという。試行錯誤の過程を全員で楽しみながら、わが家らしさとセントテらしさとが溶け合う、無二の住まいをつくり上げた。
建築実例データ | |
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ほっこり落ち着く素材を使い、すっきりとした空間をつくります。住まう方が日々を自然体で過ごせるように、色・高さ・動線などバランスを大切にしています。
マネージャー 田平 朋子