一年を通じて日照時間が長く、冬でも厳しく冷え込むことはほとんどない。けれど、夏の夕方になると内海を囲む山々に遮られて風が凪ぎ、湿り気を帯びた熱がじっとりと肌にまとわりつく。瀬戸内地方特有の気候風土のもとで春夏秋冬快適に暮らすには、潤沢な陽光を生かし風を味方につける工夫が欠かせない。 そんなパッシブデザインの妙技がここかしこに生きるBさまご家族の新居を手掛けたのは、陽光を取り込み風を生かしながら、健康で気持ちの良い暮らしを提案する「マツミ住宅」。いずれ夫婦水入らずの暮らしになることを想定した平屋造り。LDKはもちろん、北東角の寝室、北向きの子ども部屋の全てに開閉式の大きな窓が設けられ、日の出から日没まですがすがしい陽光が降り注ぐ。光が持ち込む熱は冬の室内を心地よく暖める一方、せり出す庇が夏の直射を遮り、西の山側から南手の川へと吹き降りる風はガラリや回転欄間を介して家じゅうを悠々と泳ぎまわって熱気や湿度を拭い去る。酷暑ともなればごく控えめにエアコンを働かせるが、壁や天井裏のサーキュレーターやダクトを通じて冷気は家じゅうに行き渡り、高い気密性と重力換気は外の熱気に入り込む余地を与えない。リビングソファにゆったりと腰を沈めれば、隣り合う実家との間の庭景と自然素材に彩られた空間が曖昧に溶け合い、内とも外ともつかない極上の開放感が心身を包み込む。四季の移ろいは決して常には穏やかでない。だからこそ気まぐれな自然に寄り添い、生かす英知が、真に心地よい暮らしへと導いてくれるのだ。
建築実例データ | |
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自然のエネルギーに目を向け、最大限に活用・調整し、小さなエネルギーで豊かに暮らせる住まいをつくる。それが当社の家づくりに欠かせないパッシブデザインです。できるだけ機械に頼らず一年中心地よく暮らしていただけるよう、性能数値を計算・測定し、快適な住まいをご提案します。
代表取締役 平松 崇祥