完成は2021年秋。倉敷市の中央部に位置し、昔ながらの焼杉張りの古民家も数多く残るこの一帯では、ひときわ目を引く新築住宅。にもかかわらず、この家はすっかり町のコミュニティーに溶け込んでいる。奥さまが仕事を終えて戻ると、どこからともなく集まってくる子どもたち。南向かいの実家に暮らす甥や姪はともかく、その友だちや、そのまた友だちまで。近所付き合いの希薄な市街地住まいの感覚にはなじまないが、それでも子どもたちの気持ちは十分に分かる。芝敷きの庭に映えるブルーグレーの外観は洗練の佇まいで視線を捉え、大開口からありったけの自然光を集める室内は、夕暮れ時も柔らかな光に満ちて心ときめかせる。素足に心地よいオークの床のLDKからふと窓外に目をやれば、懐かしい田舎景色が広がって、ゲストでさえも存分に“ホーム”を感じられるのだから。さらに平屋であることも、心赴かせる一因となっているに違いない。長男は1歳半を迎えたばかりで、子育てが本格化するのはまだまだこれから。「仕事と家事・育児を無理なく両立し、夫婦水入らずの将来も長く快適に暮らし続けられる住まい」を願った末の選択だったが、コンパクトな生活動線は家族の気配をおのずとつなぎ合う。そのそこはかとない安らかさが、子どもたちの足先を自然とこの場所に向かわせるのだろう。キッチンから家じゅうを一望でき、後片付けもロボット掃除機一つのフルフラットな空間は、夕食準備の忙しい時間でも、子どもたちを迎え入れるほど心に余裕をもたらしてくれる。無邪気に戯れる幼い姿にわが子の未来を重ねつつ、紡がれ始めた新たな日常を楽しんでいる。
建築実例データ | |
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皆さん幸せになるために住宅を購入しますが、実際は購入したがために不幸になっている方が数多くいらっしゃいます。多くが無理な返済計画をしているから。性能、デザインなども大事ですが、その前に無理のない計画を立てることも私たちの大きな役割だと思っています。
代表取締役 麦田 賢二