高松市西部。五色台のふもとに広がる田園風景を走る「さぬき浜街道」沿いに、牧歌的なロケーションの中で異彩を放つ箱型の建物が目に入ってくる。陽光を受けて銀色に輝くその風貌は、まるで宇宙から舞い降りた未確認飛行物体のようにも見える。とことんシンプルさを追求したスタイリッシュなデザインが印象的なこの平屋では、底抜けに明るいUさまご夫婦と4人姉妹の子どもたちがにぎやかな毎日を過ごしている。 設計したのは「池田設計室」。建物は中庭を取り囲む回廊状にすることで、家全体に光と風を効率よく取り込むとともに、周辺からのプライバシーを確保。さらに、交通量の多い幹線道路の騒音抑制にも成功している。 家族が集まるLDKは、大胆な勾配天井を施した心地よい空間。中庭を望む大きな窓から差し込んでくる陽光を受け、シナベニヤの天井やメープルの床板が優しく光を拡散させている。その中でもLDKの主役としてキッチンの前に鎮座する巨大なカウンターテーブルの存在感は圧巻だ。家族6人がそろって座り、にぎやかに食事と会話を楽しめる空間にするべく、ご夫婦と池田代表が何度も打ち合わせを重ね、理想のカタチに仕上げたという。LDKから洗面、浴室、子ども部屋への移動もスムーズで、家族6人が一緒にいながらも窮屈さを感じない居住空間を実現している。 特筆すべきは、美しい造作の家具・建具の中でひときわ目を引くピンクのトイレドア。誰もが知る「どこでもドア」の形や色を忠実に再現した奥さまのこだわりだ。トイレは奥まった所にあり、廊下からは見えないため、角を曲がると突然現れるという仕掛け。「ゲストが驚く様子を見るのが密かな楽しみ」と奥さまはペロリと舌を出しながら、いたずらっぽい笑顔を浮かべていた。
建築実例データ | |
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家を建てる際には予算や間取り、デザイン、設備の性能や使い勝手など、検討すべき要素がたくさんあります。間取り一つにしても「ちょうどいい」と感じる部屋の広さや収納スペース、動線、光の入り具合などは人によってさまざまです。その一つひとつに無駄がないよう丁寧に設計し、その場所・その建築でしか体感できない居心地のいい空間をつくり上げます。
室長 一級建築士 池田 卓也