武家屋敷や白壁の土蔵といった町並みが残り、「播磨の小京都」とも呼ばれる城下町・龍野。Tさま邸は、この地で明治期から住み継がれてきた歴史ある屋敷だ。事の発端は、蔵の老朽化が進んで管理が難しくなったこと。蔵は不要なものとして迷わず倒してしまうつもりのTさまだったが、たまたま「樹技建設」の名村社長に出会ったことで考えは大きく変わり、趣深い旧家を大切に残すべく、母家から離れ、庭、そして蔵までを3年がかりで手入れする大改修となった。 周辺一帯は「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されており、改修する場合も外観は歴史的な意匠を維持することが求められる。町家らしい風情のある格子戸は一部が朽ちていたため、元の木に近い材を探し、くぎまで特注で作り直して、昔のままに復元した。門の内には前庭を整え、玄関周りは内外装を一新して瀟洒な数寄屋の造りに。格式高い「栂普請」でつくられた二間の和室はほぼそのままに保ち、襖や額を表具師の手で整えた。中庭に面した広縁はかなり傷んでいたが、3間(6m)にもなるトガ材の床板は、今ではもう手に入らないもの。一枚一枚精魂込めて鉋をかけ、美しい木肌をよみがえらせた。 こうして新たな命を吹き込まれた家を見て、都会に出たきりだった息子さんも、いずれは龍野に帰ることを考えるようになったという。「名村さんにたくさんのことを教わって、価値観が180度変わりましたね。残していくべき価値の大きさに気づかせてもらい、本当に良かったです」と語るご夫婦の表情に、心からの満足が表れていた。
建築実例データ | |
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私たち「樹技建設」は、数寄屋建築と古民家再生を通して伝統技術を後世につなげていく建築会社です。風格のある建物の中でゆったりと花鳥風月を愉しみ、日本人が持つ美の世界観を究極まで突き詰めたものを堪能していただきたいと思います。 忙しい日々に流されず、少し立ち止まってご家族の幸せを考えた住まいづくりを考えてほしいと思います。心を込めて丁寧に対応させていただきます。
代表 名村 茂俊