岡　山

日本の風情を五感で愉しむ、本物の自然素材と伝統美を纏う平屋。

　四季折々の自然に囲まれ、人々が穏やかに暮らしを営む岡山市の郊外。亡き祖父母の人生を受け継ぐように、「建匠」の専務・佐々井さんは先祖代々の土地に終の棲家を建てた。道路に面して人を迎え入れるようにL字に開かれた平屋は、石州瓦の切妻・寄棟の屋根が印象的。桁と垂木にはマツ、軒天にはスギ、そして柔らかな色合いが上品な高千穂シラスのそとん壁など、自然素材が織り成す日本伝統の見事な造形美に圧倒される。まるで旅館のような趣のある玄関は、住み始めて幾年か経過しているにもかかわらず、いまだヒノキの優しい香りがふわりと漂うことに驚く。続く室内は、外観や玄関の和の趣を感じさせないモダンな仕上がりに。庭やウッドデッキで遊ぶ子どもたちの様子を見守れるリビングには、1面ごとに塗り方を変えて表情豊かに仕上げた薩摩中霧島壁を。天井にも用いることで消臭・消湿効果を高めるだけでなく、家族の憩いの場が丸ごと包み込まれているかのような一体感を演出した。壁や天井、床、建具にいたるまで、安心安全の本物の自然素材を適材適所に採用することで、「家と家族の健康を考える」をコンセプトに掲げる同社の思いを存分に反映した。 　何よりも家族の健康と安全を考えた優しい住まいが実現できたのは、これまでさまざまな家を手掛けてきたからこそ。佐々井さんは、「建築家人生15年の集大成として、やりたいことを全部盛り込みました」と朗らかに笑い、奥さまはその言葉にうなずくようにそっと寄り添う。随所に取り入れた自然素材の経年変化が楽しめる頃、家族はきっとより多くの素敵な思い出を刻んでいることだろう。