ローカル線の高架沿い、橋桁の向こうに森が続き、人通りはほとんどない。開けた敷地に悠々と屋根を広げながらも、そぎ落とされたデザインには凛とした空気が漂い、明るい開放感というよりは静かな陰影を感じさせる家だ。玄関を入るとまっすぐ土間が延び、開け放たれた引き戸からすぐにLDKが展開する。目を引くのは部屋の真ん中、ダイニング上に橋のように通るロフトの存在で、これによって伸び伸びとした勾配天井のリビングと、落ち着きのあるダイニングキッチンとの対比が生まれた。南面中央にスリットのように入り込んだデッキは、ちょっと不思議な「間」の空間。物干し場であり、採光や通風にも大きな役割を果たすが、決して機能のためだけのものではない。ハンモックに揺られ、空を眺めながら鳥のさえずりに耳を傾けていると「ふと現実を忘れて、どこか遠いところにいるような感覚になるんですよ」と奥さま。部屋にいても、外を見ても穏やかな自然の気配に包まれて、何気ない日常が過ぎていく。
建築実例データ | |
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ほっこり落ち着く素材を使い、すっきりとした空間をつくります。住まう方が日々を自然体で過ごせるように、色・高さ・動線などバランスを大切にしています。
マネージャー 田平 朋子