SETOUCHI MINKA

島曜日、景趣を探しに。昔日の面影が宿る小さな廃校の校庭@山口県

近年国内外から高い注目と人気を集めている瀬戸内の島旅。瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島は、それぞれに輝きのある特色を持っているが、共通しているのは、豊かな自然、のどかな町並み、レトロな建造物などが織り成す美しい景色にたくさん出会えること。どの島も実に多彩な「景趣」の宝庫であり、そんな叙情的な風景を求めて遠路はるばる訪れる人も多い。今回は「庭」をキーワードに、素晴らしい景趣を誇る島をピックアップ。その他の見所も合わせて、庭の景趣を楽しむ瀬戸内の島旅を提案したい。

<取材・文/鎌田 剛史 写真/鈴木 トヲル モデル/横田 友美>

           

この記事を書いたのは…
瀬戸内民家シリーズの雑誌表紙

瀬戸内海沿岸の岡山・広島・山口・香川・愛媛・兵庫各県で家づくりを手掛ける腕利き工務店の情報に加え、瀬戸内の自然や気候風土、歴史、文化といった、瀬戸内で暮らす魅力を発信しています。さらに詳しく>

              

幼少期の記憶をたどるノスタルジックな時間
山口県下松市 笠戸島

山口県下松市沖に浮かぶ三日月形の離島・笠戸島。本土とは「笠戸大橋」でつながっており、2019年には、国土交通省港湾局が笠戸島全域を「みなとオアシスくだまつ☆笠戸島」として登録するなど、観光とレクリエーションの島として広く親しまれている。海沿いには懐かしい雰囲気の集落も点在し、海岸や町並みの散策といった島旅ならではの醍醐味を味わえるスポットも豊富だ。近年は観光面でにぎわいを見せる一方で、集落に空き家が増えていたり、島内の小中学校が全て廃校になるなど、瀬戸内の他の島々と同じく、住民の高齢化や少子化による人口減少・産業の衰退化も進んでいる。

* GARDEN SPOT 深浦公民館(旧深浦小学校)*

誰もが幼少期や青春時代の記憶の片隅に残る庭の風景がある。その庭とは「校庭」だ。校庭は休み時間や放課後の遊び場、体育の授業や部活動での修練の場、友人と語らう場、植物や動物と触れ合う場など、学校生活におけるさまざまなシーンの舞台となる。誰もが胸に刻んだ懐かしい思い出を呼び起こし、ノスタルジックな時間にしばし浸らせてくれる学校の校庭を訪れることを島旅のイベントの一つにする、それもまた一興だ。ただし、廃校となった学校の校庭でも勝手に立ち入ることはNGなので、中に入ることが可能かどうか事前に調べておく必要がある。笠戸島の南部・深浦地区に立つ「深浦公民館」は、かつての深浦小学校の校舎。2014年に閉校してからは地域の公民館として利用されており、2022年には映画「凪の島」のロケが行われた。かつての校庭だったグラウンドに佇み、自分の幼いころの姿を重ねつつ、年季の入った校門や、オレンジの屋根が愛らしい旧校舎などを静かに眺めれば、ここで無邪気に駆け回っていた島の子どもたちの笑い声が聞こえてくるような気がする。

住所/山口県下松市笠戸島1117-1
☎️ 0833-52-0948
月・水・金曜日(祝日を除く)の8:30~17:00のみ職員が在勤しており窓口・電話対応可能 年末年始休 校舎の見学は要確認
https://www.city.kudamatsu.lg.jp/kouminkan/fukaura/index.html


心地よい散策が冒険になる、アクティブとヒーリングを一度に楽しめる島。

01 笠戸大橋

笠戸島と本土を結ぶ「笠戸大橋」は2020年に完成50周年を迎えた。鮮やかな真紅のランガートラス橋で、周囲の景観に橋の姿が美しく映える。


02 ひらめきパーク笠戸島(下松市栽培漁業センター)

下松市の代表的な観光資源である「笠戸ひらめ」「笠戸とらふぐ」の養殖や、栽培漁業の推進に取り組んでいる。センターで育てているひらめにエサをあげたり、「タッチングプール」に入って魚と触れ合うことができる。
住所/山口県下松市大字笠戸島456番地8
 ☎️0833-52-1222 https://kudamatsu-kanko.jp/saibai-gyogyou


03 外史公園

見晴らしの良い丘にある公園。スキーと日本の航空の先駆者として名高い下松市出身の長岡外史の石像が立ち、約70㎝もあった「プロペラひげ」が再現され、手には飛行機を持っている。


04 国民宿舎 大城

笠戸湾を一望できる露天風呂・地元の幸を堪能できるレストランを備えた宿泊施設。ロビーには実物の新幹線の座席が並び、窓いっぱいに広がる絶景を堪能できる。 
住所/山口県下松市笠戸島14-1 ☎️0833-52-0138   https://www.oojou.jp

「国民宿舎 大城」の敷地にある蒸気機関車のD51と恐竜のオブジェ。D51は笠戸島の工場で製造されて実際に山陽本線を走っていた592号を展示している。


05 新笠戸ドック

海沿いに走る県道の途中で目に入ってくるのが巨大な造船所「新笠戸ドック」。貨物船の築造や修繕を行うダイナミックな光景を間近に眺めることができる。


06 港町散策(深浦地区)

島の南西側に位置する深浦地区は、風光明媚で静かな港町。防波堤に腰掛け、「笠戸島レモンサイダー」と「大城磯もなか」をおやつにホッと一息。深浦の駐車場の一角にはサイコロの形をした公衆トイレがある。


07 深浦稲荷神社・深浦八幡宮

町の一角に稲荷神社と八幡宮が向かい合って立つ。古よりこの地は「三面海に面して潮浪常に山根を洗うが如く、誠に天下の絶景」と言われ、周囲に美しい眺めが広がる。


08 海上遊歩道(プロムナード)

「はなぐり海水浴場」の南側にある全長約300mの遊歩道。潮風を浴びて海上散策ができるほか、夕日の名所である笠戸島ならではの幻想的な夕景も楽しめる。

山口県下松市 笠戸島

Kasado Island 面積:11.67㎢

本土とは「笠戸大橋」で陸続きになっている。キャンプ場を備えた「笠戸島家族旅行村」をはじめとするアウトドア施設が整備されており、休日には大勢の家族連れらが訪れている。
下松市街から島まで近く、通行無料の「笠戸大橋」で簡単にアクセス可能。JR下松駅からの路線バスも運行されている。島内を走る県道は整備が行き届いており自転車でも走りやすい。


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