近年国内外から高い注目と人気を集めている瀬戸内の島旅。瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島は、それぞれに輝きのある特色を持っているが、共通しているのは、豊かな自然、のどかな町並み、レトロな建造物などが織り成す美しい景色にたくさん出会えること。どの島も実に多彩な「景趣」の宝庫であり、そんな叙情的な風景を求めて遠路はるばる訪れる人も多い。今回は「庭」をキーワードに、素晴らしい景趣を誇る島をピックアップ。その他の見所も合わせて、庭の景趣を楽しむ瀬戸内の島旅を提案したい。
<取材・文/鎌田 剛史 写真/鈴木 トヲル モデル/多田 有輝子 林 実紀>
アートな島の日常から感じ取る、心地よい暮らしの温故知新。
香川県 男木島
香川県高松市の男木島は、3年に1度開催されている「瀬戸内国際芸術祭」で毎回会場の一つとなっており、近年はアートの島として県内外から多くの観光客が訪れている。また、山肌に民家が軒を連ね、坂道の石段・石畳や、細く曲がりくねった路地が迷路のように走る独特な風景も見所の一つとして有名だ。古き良き島の暮らしと現代アートの息吹が融合した男木島をゆっくりと歩けば、懐かしくも新しい、新鮮な情景に出会える。
目次
* GARDEN SPOT 男木島の町並み*
眞壁陸二「男木島 路地壁画プロジェクト」
訪れる人の郷愁を誘うノスタルジックな男木島の町並み。細い路地を気ままに散策していると、荒廃した空き家や庭が点在しているものの、集落全体は寂れてしまうことなく健全に残っている印象を受ける。その大きな要因となっているのは、所々に設けられた眞壁陸二氏の「男木島 路地壁画プロジェクト wallalley」をはじめとするアートの息吹が、古い街並みと見事に調和していること。そして、立派な庭園とまでは言えないが、花を植えたり、アプローチを整えたりと、各民家の庭に住民が程よく手を入れていることも、島の暮らしの律動をリアルに体感できる要素と言えるだろう。近年は、放置され薮化した庭を植樹やアート作品で彩る「みんなのお庭計画」と称したボランティア活動も行われているそうだ。
古いものと新しいものが折り重なる島の景色。両方あって両方いい。
01 「シマシマめおん」で上陸
男木島には船体の柄が印象的なフェリー「シマシマめおん」で。島に入港すると、魚のうろこのように光る民家の屋根や壁が密集する独特の風景が目に入る。
02 男木交流館(男木島の魂)
ジャウメ・プレンサ「男木島の魂」
スペインの現代芸術家ジャウメ・プレンサ氏がデザインした島のシンボルとも言える建物。8つの言語の文字が刻まれた白い屋根の外観が目を引く。
03 男木島灯台
1895年に建てられた灯台。全国でも希少な総御影石造りの美しい佇まいで、映画「喜びも悲しみも幾歳月」のロケ地としても有名。資料館が隣接。
04 男木島灯台キャンプ場
台周辺には景色が美しい海岸が広がる。ここでは申込をすればキャンプが可能だが遊泳は禁止。
住所/ 香川県高松市男木町1062-3 ☎️087-873-0001 https://ogijima.site/camp
05 豊玉姫神社
島民から「玉姫さん」と呼ばれている神社。港の大鳥居から長い石段の参道が続く。振り返ると瀬戸内海の絶景が眼下に広がり、島屈指のビュースポットとして知られる。
06 ogijima ゆくる
大正時代の古民家を再生したカフェ・ゲストハウス。雰囲気満点の店内でゆったりとした時間を満喫できる。ゲストハウスは一棟貸しで2部屋、定員7名。
住所/香川県高松市男木町194-1
☎️ 070-4228-8483
https://ogijima-yukulu.com
07 歩く方舟
山口啓介「歩く方舟」
島の南端の漁港にある立体アート。ノアの方舟をモチーフとした山口啓介氏の作品で、白と青の模様の方舟が海を渡ろうと歩くさまを視覚化したもの。
08 島テーブル
TEAM男気「タコツボル」
巨大なタコツボを使ったTEAM 男気のアート作品「タコツボル」の隣りにある売店。島民が運営し、手作り弁当やオリジナルグッズを販売。土日祝のみ営業。
香川県高松市 直島諸島 男木島
Ogi island 面積:1.34㎢
高松港の北約1km に浮かぶ島。御影石造の「男木島灯台」や、毎年2 〜3 月に咲くスイセンの花畑、懐かしい島の集落などの見所が多い。隣島である女木島とは、雌雄島の関係にある。
島内の移動は基本的に徒歩。迷路のように入り組んだ集落は平地が少なく坂道が多いので、歩きやすい服装と靴で。特に灯台までは片道約30分の山道歩きを強いられるので注意。
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