木、草、土、石といった自然素材を高度な技術で加工した伝統工芸品は、はるか昔より日本人の生活や文化を支え続けてきた。人間の磨き抜かれた手から生み出される品々の繊細さと美しさは、日本が世界に誇れるもののひとつ。瀬戸内にも多彩な伝統工芸品が今も残り、愛され続けている。古来より人々の暮らしに寄り添ってきた山口県の国指定伝統的工芸品を紹介。味わい深い匠の逸品を、住まいの一部にアクセントとして取り入れてみてはいかがだろう。
<取材・写真・文/鎌田 剛史>
繊細な手仕事が生む匠の逸品
萩焼(はぎやき)
「萩焼」は16世紀末、毛利輝元の命により朝鮮人陶工が萩で御用窯を築いたのが始まりといわれ、古くから「一楽二萩三唐津」と評されるほど全国にその名を馳せる逸品だ。使うほどに渋みが増していく枯れた素地の色が独特で、日本中に多くの根強いファンを持つ。経済産業大臣指定の伝統的工芸品。
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大内塗・大内人形(おおうちぬり・おおうちにんぎょう)
大内塗は約600年にわたり山口県山口市を中心に受け継がれてきた漆製品。朱色の漆の下地に金箔の大内菱を配し、秋の草花を添えて描いた優雅な絵模様が特徴だ。この漆技法を生かして作られるのが大内人形で、現在は漆器よりも盛んに製造されている。経済産業大臣指定の伝統的工芸品。
赤間硯(あかますずり)
山口県宇部市の岩滝地区は、硯の高級品種「赤間硯」の産地として名高い。この地で採れる赤間石は粘りがあり細工がしやすく、美しい紋様を施した優美な硯は、実用を兼ねた愛好品として長年珍重されてきた。その歴史は約800年を誇る。経済産業大臣指定の伝統的工芸品。
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